第11話 幸せをくれた日
宛もなく一人で歩いてた。家に帰りたくなかったから。あんな場所オレの家じゃない。一日の時間がもっと短かったら良かったのに。そしたら全部が一瞬で終わって、早く人生も終わるから。一人暗闇の中を歩くように彷徨っていた。今すぐ終われる方法も探しながら。
突然耳に入ってきた声に驚いて辺りを見回す。いつの間にか公園に来ていた。同じくらいの歳の子供達が遊んでいる。なんにもないみたいに無邪気で。
あ─────……頭が痛い。
早くここから離れよう。うるさいのは嫌いだ。
耳がキーンとなって不快な映像が頭に流れそうになった時だった。
「こ、こんにちは…!」
一人の女の子の声が全てを止めてくれた。
「……あ……こん、にちは……」
オレの返事を聞いたその子は嬉しそうに表情を明るくして
「ねぇねぇ、いっしょにあそぼう!」
手を握ってきた。その子の笑顔は目が潰れるほど眩しくて気づけばオレは泣いていた。それを見たその子は
「!! ごめんなさい……いやだった…よね……」
自分が悪いことをしたと思ったようで落ち込んでしまった。
「…ちがう。目に、ゴミが入った…だけ」
適当な嘘で誤魔化すと
「えっ!?それはたいへん……!だいじょうぶ?いたくない?」
ころころと表情を変えるその子はオレの涙を拭ってくれた。小さな小さなその手と細い指で。
「……だいじょうぶ。…………ありがとう」
「……!!うん!!」
その子は教えてくれた。陽の光がこんなに眩しくてあたたかいことを。
それからその子……澄乃えるはオレをみんなの輪の中に入れてくれた。でも、オレにはえる以外いらなかったからずっとえるにくっついていた。学校でも話しかけてくれた時は本当にうれしかった。クラスが同じになってからは四六時中一緒にいられた。えるといれば嫌なことを考えなくていい。思い出せばいいことだけが残る。嫌なことは全部殺せばいい。あの笑顔を見た瞬間そう思えた。アイツが来てからの全ての日々や苦しみ、それより前のことも……全部忘れた。初めて思えたんだ……幸せだって。この子とずっと一緒にいたいって。あの日からずっとえるだけが特別なんだ。えるだけがオレにくれたんだよ。楽しいことも嬉しいことも……幸せも、全部。三ヶ月ぶりにえるに会えた時だってそうだ。それまでの寂しさも全部忘れられて、幸せだって思えた。苦しくて死にそうで息の仕方も分からなくなってたけど、えるが言ってくれたんだ。オレのそばにいるって。オレのために泣きながら。
──────だから……そう。これからだって変わらない。えるはちゃんとそばにいてくれる。オレを見てくれる。だってオレたち初めて会った時から永遠だから─────そうだよね?える。
「……くん。……さとみくん?」
えるの声が聞こえる。
「さとみくん、どうしたの?」
オレのこと呼んでる。
「……える」
「なにか考えごと?」
オレのことを見つめながらえるが首を傾げてた。えるって何しててもかわいい。
「…………。お腹空いた」
「えー??今ご飯食べてる最中なのに?ふふっ。じゃあ特別に私のから揚げあげる」
「……。あー…」
オレが口を開ければ
「ふふっ。あーん」
それに応えてくれる。嬉しそうに微笑みながら。
「……ん。………おいしい」
「ホント?よかった。今日は私が作ったんだよ。さとみくんの口にもあったみたいでよかった〜」
どうりで。世界で一番おいしいわけだ。
離れてた時間がそうさせたのか。少しだけ昔のことを思い出していた。たまには悪くないけど、えるといられるこの時間をもっと大切にしないと。えるがそばにいてくれるんだからオレもそばにいて、そしたらずっとオレだけが映るから。離れてた分もっともっと一緒にいて、えるにも幸せをあげないと。えるがオレにくれたみたいに──────。
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