第3話:「いえ」とはじつにひろい(勝手に入ってくんな!)

私は佐藤春奈さとうはるな。16歳の女子高校生である。


「はるなさん、はるなさん、納豆」

「……あんた、素手で納豆って…………』

 

 相変わらず、女の子に付きまとわれている私であるが、もうすぐ家につく。

 ……しかし、このままではこのゴキブリ小娘が家に上がってくる気がする…………。


「はるなさん、はるなさん」

「はぁい?(はぁ、だんだん返答もめんどくなってきた)」

「はるなさん、何が好き?」

「え!?(マジかよ新パターン来たぞこれ)」

「わたし、エビ好きー」

「へ~、意外と普通なんだね~(少し驚いた)」

「うん! それでそれで、理由わね~」


 理由……? ただ単においしいからじゃなくて……!?


「パリパリしてるから~。」

「パリパリ?」

「しっぽが~」

「あー! そういうことね! 確かにしっぽパリパリしてるね~。私もそう思~う』

 

 あれ?普通に会話しちゃってない? 私。

 この、ストーカーだからね?


「あとね、あとね、はるなさん」

「うん?」

「ゴキブリの羽と感触が似て」

「 「 あーあーあああああー-----きー---こーえなー--いいぃぃぃーーーー! 」 」

 

 やめて! エビ食べられなくなるからー!



「──あとね、あとね、かきも好きだよ」

「へ、へぇ~、柿か~」

「おいしい」

「うん、そうだ、ね」

「このまえね、アタマにおちてきた」

「そ、そう。痛かった……?」

「うぅうん。痛くはなかったよ、やわらかかったから」

「へぇ~、熟してたからかな~」

「うん、じゅくじゅく言ってて、食べごろだった」

「へぇ~、……じゅくじゅく……」

「確かね、となりのおじさんがばーべきゅーしてた」

「え? てことは柿を焼いてたの? 網の上で? そんなこと……あるのか……? うーん…………」

「おにわでばーべきゅーしてたんだよ。でも、あめがふってきたから、その``かき``は海に返してあげたんだ~」

「……かき、あのかきを……、鉄網の上で……。炎で、あぶって……? あまいのかなぁ............」

「ここだぁ」

「……え? あ、あぁ家だ! いつの間に……」

「かぎ」

「うん分かってる……、え~と、鍵はどこにしまったか…………」

「まだ?」

「待って! 今出すから!」

「はーい」

「あったー!」

「わー」

「……あ、お母さん家にいるんだった。だから開いてるわ~。うわー時間無駄にした~。まぁそんなにじゃないか~』

「かぎってなぁに?」

「え? 鍵? 鍵ってのは──って! いつまで付いてきてんのよ! おうちに帰りなさい! でなきゃ交番に引き渡すよ! この人ストーカーですって言って……』

 

「あら、春奈。帰ってるなら入ってくればいいじゃない」

「ゲッ、お母さん!』

「早く、入りなさい。寒いんだから」

「あ、えっとお母さん、それよりこの子……」

「ほら! 早く入らないとかぜ引くよ! はるなぁ! はやくはやくぅ!」

「分かってるって! だけど……、ん?」

「だぁれ? その子、まさか……、お友達!?」

「ちが、違うって! なんか道ばたで会って、付きまとってきて……』

「まぁ! あの人見知りの春奈に友達が!?」

「違うよ! 私が友達作らないのは必要性を感じないからであって! 決して人見知りとかコミュ障とかじゃウンヌンカンヌン」

「そうだ。わたしは、はるなさんの友達だ」

「まぁ、大人に向かってため口で。かわいいわね~。あ、寒いでしょ。さ、入って入って」

「かたじけない~!」

「あ、お母さ……、違うって! こいつストーカー! ストーカーだって~!」


 こうして私は、変態ストーカーゴキブリ小娘を家に入れてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

撮りじゃんVide! イズラ @izura

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ