Day23「もうランタンも消えちゃうし」

 桟橋では、彼女たちとは別の一団が何かの作業を行っていた。太いケーブルのようなものが「運河」沿いの商店群ガレーリアと、飛行艇との間で接続されようとしている。


 あれは一体何をやっているのかと、首をかしげるビネットに、

「あの艇の電力を、応急でこちらに供給してくださるみたいなの。もうランタンも消えちゃうし、とっても助かるわ」

 とロザーナ店長は微笑みを浮かべた。


 翼の上に並ぶ、八発の巨大なエンジン。その発電の力は、ビルの一つや二つが使う電力の量をまかなうには十分なものらしかった。

 そこで、電力会社の上級技師らしいあの紳士が、ロザーナ店長たちのために、臨時での電力供給を申し出てくれたのだった。


 娘のために内緒でケーキを用意してくれたビネットたちの小さな親切が、あの紳士にとっては本当に嬉しかったらしかった。


 星の輝く凍てついた夜空に、突然に轟音が響き渡る。

 停電で真っ暗な大都会の運河に浮かぶ旅客用飛行艇クリッパーが、八発のエンジンを一斉に始動したのだった。

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