Day22「すごい! お城みたい!」

「すごい! お城みたい!」

 タラップを渡って飛行艇に足を踏み入れるなり、メイベル先輩は小さく歓声を上げた。


 超富裕層向けの、その艇内。絢爛たるシャンデリアが頭上で輝き、分厚い赤い絨毯の上を昔話のお姫様が歩いて来そうに見える。

 ビネットには悪趣味そのものに見えたのだが、無邪気に目を輝かせているかわいい先輩に、余計なことは言えない。


 ゆったりとしたソファーが向かい合う個室客室コンパートメントに、

降誕祭クリスマスのおいしいケーキはいかがでしょうか?」

 と愛想の良い笑顔を浮かべたメイベル先輩が営業に伺うと、ほぼ確実にケーキが売れた。

 そういう芸当が到底無理なビネットは、ひたすらにケーキを配達して回る、無表情なメイド役に徹していた。


 ケーキを入れた停滞保管函ステイシス・キャリアを提げて、ビネットたちは桟橋の上を何往復もするのだった。

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