Day21「売りましょう、店長!」

「よろしかったらお客様、ケーキを何個かお持ちになりませんか? どうせ、駄目になってしまいますので。もちろん、お代はいただきません」

 ロザーナ店長が、紳士に言った。店員みんなで持って帰るにしても、限界がある。どうせなら、配ってしまったほうがいい。


「実は、その件でお話に伺ったのです。その余ったケーキを、あの艇の中で販売していただけませんか?」

 若い紳士は、背後の大型旅客飛行艇クリッパーを指し示した。


 停電で管制システムも大混乱していて、すぐには出航できない状況らしく、乗客たちに動揺が広がっているらしかった。気持ちを和ませるには、美味しいケーキはうってつけなのだ。


 どうせ相手は金持ちだらけ、高値でケーキを売りつけても文句は出ないだろう。

「売りましょう、店長!」

 ビネットは高らかに声を上げた。

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