Day20「南方深部の暴風力発電所が」

「あの、今からどうされるのでしょうか? このお店は」

 なぜか紳士は、そんなことをたずねる。

「閉めるしかありませんね、このまま電気が戻らなければ」

 聞くまでもないことだろう、と思いながらビネットは相変わらずの無表情でそう答えた。


「すみませんが、すぐには戻らないと思います」

 紳士は声を潜めた。

「実は私、電力公社の技師でして……。南方深部ディープサウスの暴風力発電所からの送電設備が、深刻なトラブルに陥っているらしいのです。こうなる前に私たちが現地に赴任して、設備の改良に取り組む予定だったのですが……」


 南方深部では、「極渦」と呼ばれる暴風雨が一年中吹き荒れていて、その暴風の力が発電に利用されている。

 そこからの送電が深刻なトラブルを起こしているのなら、復旧は簡単ではなさそうだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る