Day19「すみません! 先ほどの店員さんを」

「お店はもう閉めるしかないですね。大事な夜に、とっても残念だけれど……」

 ロザーナ店長が、悲しげに言った。


 こんな状況ではもうお客さんは来られないし、電気が停まったままでは、低温保存庫のケーキも駄目になってしまう。携行用の停滞保管函ステイシス・キャリアに移すにしても、個数が足りない。

 ランタンのキャンドルだって、もう長くはもたないだろう。あくまでムード造りの飾りなのだ。


 そんな中、店先から大きな声が聞こえた。

「すみません! 先ほどの店員さんを、お願いできますか」

 ビネットが振り返ると、つい先程にキャンセル分のケーキを売った、あの若い紳士がそこに立っていた。


 まだ、なにか用事があるのだろうか。

 ランタンの暗い光の下、ビネットは無表情なままでお客に近づいた。

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