Day18「みなさん、ご無事ですか?」

 そんな中、エンジンの爆音を立てて走ってきた一台のくろがね三輪が、店先で急停止した。暫定市街地ではありふれた乗り物だが、この高度集積地区コア・エリアに姿を現すのは珍しい。

「みなさん、ご無事ですか?」

 車を降りて飛び込んで来たのは、ロザーナ店長だった。


 突然の暗闇に包まれた巨大都市は、大混乱に陥っていた。

 高架軌道Sバーンなどの交通機関も全て止まり、非常用の発光瓶や鉱物油カンテラなどを手に家から飛び出してきた人々で通りはあふれていた。


 超々高層ビル内の人たちは、地上へと降りる垂直バーティカルゴンドラの停止で、外に出ることさえままならなかった。

 街区ごとに非常電源の備えはあったが、町の全機能が失われてしまっては、全く力不足だった。


 店長は、混沌に満ちたその通りを、死に物狂いで車を走らせて、ここまで来てくれたのだった。

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