Day13「ちゃんと味わって、いただくようにします」
ビネットの期待通り、残ったケーキのうちのいくらかは、持ち帰らせてもらえるようだった。商品の味は知っておいたほうが良い、ということでもあるらしい。
「ちゃんと味わって、いただくようにします」
と真顔で答えつつ、箱の中の美味しそうなケーキの数々にときめく心を、彼女は押さえきれなかった。
家について、まずはシンプルなイチゴのタルトを一つ食べてみる。
イチゴの酸味を引き立てるクリームの上品な甘さと、生地のサクサク具合の絶妙な組み合わせに、彼女は心底感心してしまった。
あの店長は、本当にこの味だけで暫定市街地から勝ち上がってきたのだ。
さあ次はこちら、とシュトーレンを無振動ナイフで切ろうとした瞬間、部屋の灯りが落ちた。最近、本当に停電が多い。あちこちに貼ってある残光テープが、室内の様子を線画のように浮かび上がらせる。
彼女は黙ってカーテンを開いた。この街を見下ろす超々高層ビル群の灯りが窓から降り注いで、部屋を明るく照らし出す。
何が起ころうが、
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