Day7「もちろんです。ありのままをお伝えします」

 実際のところ、ビネットがいきなり爺さんを脅しつけてみせたのは、手配師の退路を断つための計算だった。まんまとこの男は彼女の術中に落ちた、そういうわけだった。


「わたしがどんな女か、ちゃんと向こうさんに伝えるんだよ。正確にね」

「も、もちろんです。をお伝えします」

「そう、をね」


 少しも笑っていない目で、にっこりと笑みを浮かべながら、ビネットは咥えていたセロトニン・スティックを手配師の震える唇の間に押し込んだ。


 怯えた顔でスティックを咥えたままの手配師が言うには、その洋菓子店パティスリーの本店は二級暫定商業地の商店街にあるとのことだった。

 金持ち相手の取り澄ました店なのだろうと思っていた彼女は、少しほっとした。彼女自身、暫定市街地の外れで生まれ育ってきたのだ。

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