Day2「若い娘っ子なぞおるもんかね!」
「そんなこたあないぞ。今度ばかりは間違いない」
手配師は、自信有りげにカイゼルひげの先をひねった。
「だがよ、じいさん。悪いがあんたは駄目だ。この仕事は、若い娘に限っての募集なんでな」
「見ろ! やっぱりインチキだぞ。こんな場所のどこに、若い娘っ子なぞおるもんかね! そんなありがてえもんがいたら、男どもに裸にひん剥かれとるわ!」
シワだらけの喉を震わせて、老人は言い返した。
「へえ、そうかい。じゃあ一つ、わたしもひん剥いてもらおうじゃないか」
その背後で、ドスの効いた低い声がした。
驚いて振り返った老人の前に立っていたのは、カーキ色のワークコートを着た、背の高い女性だった。不機嫌そうな唇の端にセロトニン・スティックを咥えたその若い女は、鋭い目で老人をにらみつけていた。
「こ、こりゃあビネットの姐さんでねえか。いや、あんたみたいな人のことを言ったわけじゃねえんだ……」
狼狽した様子で、老人は言い訳した。
「『あんたみたいな』ってのはどういう意味なのかね。私みたいなのは裸にひん剥こうって気にはならないってのかい?」
低いがよく通るその女の声が、フロアに響く。がらんと高い天井のバチェラー燈が、その声に合わせたかのように不安げに明滅した。近頃どうも、電力が不安定なのだ。
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