第7話 ハートの女王とアリス

 最後の授業が終わり、放課後になる。私はアリスに連れられて校舎裏まで行く。校舎裏に行くとチシャともう1人、誰かいる。


「えっと……会長?なんでこんなとこに……というかなんでチシャと一緒に?」


 赤猫 千崎(あかねこ ちさき)。私が通っている学校の生徒会長。常に高圧的でワガママ、一言で言えば傲慢である。その性格故に生徒たちからは嫌われている。


「あら、貴方は……どなたでしたっけ?」


 私を見て少し驚いたようだが、すぐにいつもの態度に戻る。


「あ、えと。2年2組の白木 美兎です。アリスがここに用があるって言われてきたんですけども」


 すると、千崎は私の横に立っているアリスに目を向ける。アリスは、スカートの裾をつまんで「アリス・リデルです。初めまして」と挨拶する。


「赤猫 千崎ですわ。この学校で生徒会長を務めております。それで?このブッサイクな猫はなんですの?というか、この私(わたくし)をこんなとこに呼び出してなにをするつもりですの?」

「不細工とは失礼なやつだな。何度も言ってるが俺のことはチシャと呼べ」


 首根っこを掴まれ、嫌そうにしている。


「うんうん、やっぱりバレンティーナはこうでなくっちゃつまらないわね。美兎は少し性格が違ってだけど」


 アリスは千崎の質問を華麗にスルーし、千崎をバレンティーナと呼ぶ。それを聞いて会長も私と同じなんだと言うことを悟る。


「バレンティーナというのはよくわかりませんがなんだかいい気分ではないですわ」

「あ、そうね。バレンティーナは名字だものね。コラソンと呼んだ方がいいわね」


 コラソンが何かはわからないけど、そう言うと千崎は少し気分が良くなっていた。


「えっと、アリス。もしかして会長も?」

「えぇ、そうよ。コラソン……じゃなかった。千崎にはハートの女王、コラソンが取り憑いてるの」


 勘があまり良くない私ですら気づけたのでアリスに確認を取る。いきなり名前呼びをされたのか、千崎はまた不機嫌そうな顔をしていた。


「アリス。こんな性悪女の話はあとだ。まずはアレを片付けたほうがいいんじゃないか?」

「アレ?」


 チシャが顎を向けた方を見ると、大きな雲がこっちに向かって動いてきている。よく見ると、雲の一つ一つが鰯のような魚が集まっている。


「な、なんですの?あれは」


 流石の生徒会長もあの鰯雲には驚いたのか、目を丸くしている。


「さて、美兎、千崎。今度の零し種はアレよ」


 アリスは笑って鰯雲を指差す。未だに千崎は何が何だかわからない顔をしているが、既に零し種を見ている私は、軽く準備運動を始める。


「あ、そうそう。アリス、会長の……ハートの女王の特性はなんなの?」


 準備運動を終え、ゴミ溜めを漁っているアリスに声をかける。昨日持っていた鉄パイプを持ち、少し間を置いて悪い笑みを浮かべアリスが答える。


「コラソンの特性はね、感情の起伏による相手の洗脳よ」

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アンデッドアリス @34fulufulu

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