第6話 奇怪な猫とアリス

 2日連続であり得ないものを見た。今目の前で不気味に笑っているアリスと、たった今ドアから入ってきたアリス。一瞬よく似た姉妹かと思ったが、アリスは200年前から生きていることを思い出しすぐにこの説を否定する。


「……あら、チシャじゃない。久しぶりね」


 今ドアから入ってきたアリスはもう1人のアリスを見て微笑み近づく。そして、チシャと呼んだアリスの前まで行くと、鞄から水の入ったペットボトルを出して中に入っていた水をかける。すると、もう1人のアリスはいきなり飛び跳ね、窓際まで逃げる。


「おいこらアリス!なにしやがる!」


 アリスの声ではなく、少し歳のいった男のような声になり。そして、アリスの姿が縮み、少し大きく、紫と濃い紫の縞々模様のある猫の姿になった。


「それはこっちのセリフ。なんで貴方がこんなところにいるの?貴方あの時こっちに来なかったわよね?」


 ペットボトルを前に出し、また水をかけようとする。が、猫は素早い動きで教卓に行き、説明を始める。


「簡単な話さ。アリスという遊び相手かいないあそこは暇で暇でしょうがなくてな、つい最近女王の目を盗んでこっちに来たのさ」


 クァーという声を出して欠伸をし、後ろ足で自分の首を掻く。


「遊び相手ならトランプ兵がいるじゃない。わざわざこっちまで来る必要かはあったの?」


 私を置いてきぼりにして2人で話を進める。そのことに気づいたアリスが、チェシャ猫を紹介する。


「この子はチェシャ猫。チシャって呼んであげてね。アタシが向こうにいた時に時々遊んでくれてたの」

「ん、俺はチェシャ猫。今アリスが言ったようにチシャと呼べ。好きなことは人間を揶揄うことだ。よろしくな、白うさぎ」


 そう言い体の縞々模様をくるくると動かしている。それから、他の人が来るまで向こうであったことを聞いた。チシャに散々揶揄われたり、時には協力したりと、話を聞いてる限りでは楽しそうなことばかりだった。


「あ、チシャ。そろそろクラスの人たちが来るから外に行って」


 黒板の上にかかっている時計を見てアリスが言う。


「ちぇ、もう少しそこの白うさぎと話したかったが……まぁいい。そんじゃアリス、また後でな」


 のっそりと立ち上がり、またニヤニヤと不気味に笑ってながらチシャが突然消える。その光景を見て、一度アリスと顔を見合わせ、クスクスと笑ってしまった。

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