第3話 不死身のアリス
その光景を非現実と思いたかった。しかし、何度目を擦っても、何度頭を叩いても、その光景を変わらなかった。首から上の無いアリスの体が立っていて、生首が下に落ちている。当然、死体を見るのは初めてなのですぐに吐き気がする。激しい動悸を抑え、なんとか吐かないように口を手で抑える。
「ア……ア……アリス!」
すぐにその場から逃げようとしたが、足がすくんで動かない。どんなに陸上部で鍛えた脚力も、動かなければ使い物にすらならない。しかし、不思議なことはまだ続く。死んだはずのアリスの体が、突然動き始めたのだ。
「え?……アリ……ス?」
アリスの体は、自分の首を探しているようで、両手を前に出し、ウロウロしている。ようやく首を見つけたのか、首を持ち上げ自分の体と繋げる。
「あ、あー……うん、よし!復活!」
流血していた首は、既に血が止まっていて、トントンとその場で飛び跳ね、体の調子を確認している。
「アリス……え?今、死んだんじゃ」
あり得ないと思うが、今起こっていることは現実で、アリスは一度死に、そして生き返った。頭の中がこんがらがり、状況を全く飲み込めない。
「美兎!詳しいことは全部まとめてあとで説明するから!とりあえず今はこいつをやっつけるよ!美兎も協力して!」
「え?いや、協力してって言われても……私喧嘩とか苦手なんだけど!?」
ようやく体が慣れてきたのか、さっきよりかは動けるようになってきた。差し出されたアリスの手を掴んで立ち上がり、少しだけ離れる。
「大丈夫。美兎は白うさぎだから。思いっきり走ってジャンプして蹴れば怯ませられる。アタシが合図するからそれに合わせて動いて」
何を言っているのかはわからないが、今は言われた通りに動くしかない。覚悟を決め、クラウチングスタートの構えをとる。狩りパクはその様子を見守っていたが、ついに鎌を構えて走り出す。
「今!行って!」
アリスの合図で走り出す。火事場の馬鹿力と言えばいいのかわからないが、おそらく今までで1番早い速度で走り出せた。狩りパクが鎌を振り上げると同時に右足に力を入れ、そのまま走り走り幅跳びと垂直跳びを合わせたような動きで後ろまで飛び跳ねる。
「そのまま思いっきり蹴って!」
またもやアリスの合図とともに壁を蹴り、頭を狙って回し蹴りをくらわす。モロに受けたのか、フラフラした足取りでアリスの元へ向かっていく。
「……いきなりこんなとこに生み出されて困惑していたのだろうけど、貴方はこんなことにいていい存在じゃないわ。大丈夫よ、元いた場所に帰るだけだから」
そう言い、持っていた鉄パイプを前に突き出す。鉄パイプは狩りパクの首を貫通し、そのままズルズルと体が崩れ落ちる。そして、体が徐々に光の粒子となって消えていく。その様子をアリスはただじっと見つめていた。
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