第2話 狩りパクとアリス
アリスが転校してきてから一週間が経過した。その間、特に何事もなく日常が過ぎていく。何かあるとすれば、たまにアリスが校内を睨みつける時があるくらいだ。理由を聞いても「ううん、なんでもないよ」と笑って誤魔化してくる。そのことを不思議だなと思いながらも『アリスだから』とどこか納得する自分がいる。
「いけない……遅くなっちゃった」
ある日の部活帰り、片付けをしていた18時を過ぎるところだった。誰もいない明かりが消えた長い廊下を小走りに駆け抜ける。すると、すぐ後ろで何かを研ぐ音が聞こえた。
「え?うそ……だって、都市伝説じゃ……」
前にクラスメイトが話していたことを思い出してしまった。それは、『18時を過ぎて校舎の2階廊下を歩いていると、狩りパクという大鎌を持った男に追いかけられ食べられる。』というよくある七不思議のことだった。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
首筋に寒気がし、恐怖に駆られる。研ぐ音はどんどん近づき、真後ろまでしたところで音が止む。恐る恐る振り向くと、そこには大鎌を持ち、目が無く、大きな口でギザギザな歯をした大男が立っていた。その大男が鎌を持ち振り上げ、そのまま振り下ろす。
「誰か……助け」
足がすくみ、動けない。ギュッと目を閉じる。ガキン!という音と少ない火花が鳴る。数秒して、死んでないことがわかると、恐る恐る目を開ける。
「え……アリス?」
そこには、どこから持ち出したのかはわからないが、鉄パイプを持ち、鎌を受け止めるアリスの姿があった。
「ようやく見つけた……最初の"零し種"」
そのまま鉄パイプを振り、鎌を弾き返す。そのまま私の手を掴み、引きずるように走り出す。
「ちょ、ちょっとアリス!あれなに!?一体全体何がどうなって」
言い終わる前にアリスに口を塞がれる。耳を澄ますと、また研ぐ音がし、2人して息を潜める。少しして、音が遠ざかるとアリスが説明を始める。
「……まず最初に、アタシ、アリス・リデルの実年齢は216歳。不思議な国から逃げて、そのせいで現れた"零し種"の回収をしているの」
いきなり突拍子のないことを言われる。当然理解も納得もできないが、あとで詳しく説明すると言われ、今はそのまま無理やり納得させることにする。
「さてと、じゃあ行きましょうか」
アリスが立ち上がり、釣られて私も立ち上がる。そして、隠れていた角を出た瞬間、"ソイツ"が現れる。すぐにアリスが反応し、私を突き飛ばす。
「っ!アリス!」
すぐに起き上がりアリスを見ると、大鎌に首を刎ねられ、首から下がないアリスの体と、生首が床に落ちていた。
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