第二章 そして、俺は転生したようだ
第一話 転生早々能なし認定
――身体が妙に軽い。
まるで全身が綿菓子にでもなったかのようだ。
元々空っぽに近かった脳みそ含めて、何もかもが消え去った感覚だ。
そして体に力が入らない。
どうなっているのだろうか。
必死に覚えている記憶を呼び出そうとする。
そして――。
「船に乗っていたような……」
しかし、船はどこにもない。
視界も白一色という味気なさだ。
眼球を動かそうとしても、まるで動かせる気配がない。
「どうなって……」
今も声帯から声を発しているのかどうかすらも分からない。
もしかして、もしかすると、俺は――。
「俺は、死んだのか?」
何となく呟いてみるも、それが正解なのだろう。
先程から思考の隅っこで恐怖の記憶がチラついている。
とてつもなく恐ろしいことが起きて、その結果俺は命を落としてしまったのだろう。
じゃあそれならば、ここは天国なのか。
それとも、地獄なのか。
少なくとも、ガイドさんが親切に案内はしてくれないようだ。
「ん?」
前方に何かがいる。
宙に浮かぶ光の玉がいくつも浮かんでおり、それらが行儀よく並んでいた。
弱々しい光で、どうにもシンパシーを感じてしまう。
あれらも俺と同じ死者なのだろう。
彼らに近づこうと強く念じると、身体が前へと進む。
そして、俺も豆電球の群れに加わると、その中心に一際輝く炎が揺らめいているのに気が付いた。
豆電球がキャンプファイヤーでもしているような、そんな珍妙な光景となっているに違いない。
「貴殿達は――」
誰かの話し声がする。
威厳のある深い声だ。
遠くにいても、思わず背筋を正してしまいそうだ。
最も、今の俺には伸ばす背中すらないが。
「選ばれし者達だ。是非とも理想の世界のため、この転生神エオニアに力を貸して貰いたい」
どうやら勧誘の真っ最中のようだ。
転生神というのがどういう神様なのか。
いずれにせよ、疑り深い俺としては身構えたいのだが、他の豆電球達は素晴らしい声に感動したのか激しく点滅している。
これは所謂催眠商法という類ではないだろうか。
「ありがとう。では、諸君らを転生させる儀式を行うが、その前に――」
「その前に?」
俺の呟きは周囲に聞こえているのだろうか。
少なくともエオニアの声しか聞こえない以上、他の連中とは会話が出来ないようだ。
「諸君らに力を授けよう」
「力……?」
すると、エオニアは不思議な光を放った。
ゲーミングなんとかというようなオシャレな光り方だ。
どんな力なのか不安に思っていると、エオニアが厳かに語り出す。
「さて、これにて諸君らにクラスを授けた」
「クラス?」
「誰しもが複雑な人生を歩むものだ。その前世の経験こそが強い力を育み、素晴らしき才能が芽吹く。来世へ挑む者への私からの贈り物――それがクラスだ」
クラス分け、という単語が思い浮かぶ。
あまり良い思い出のない言葉だ。
というか隅っこに追いやられた記憶しないよ、俺は。
「さて、皆のクラスを調べよう。そこの者は――素晴らしいな。クラス『大賢者』だ」
エオニアはどいつのことを言っているのか。
ただ、大賢者様と伝えられた者は嬉しそうな光を放っている。
成る程、クラスというのは職業みたいなものか。
「次は、『グレートニンジャ』、『
次から次へと豪華な名前が飛び交う。
エリート達でのオールスター打線というのは見ているだけでも楽しそうだ。
そうか、平凡で何の面白味もない俺にもきっと凄いクラスの適性があるのだろう。
そう考えると、どうにもワクワクしてしまう。
死んでしまったというのに、こうも心が弾むというのは不思議ではあるが。
そして、俺の隣の奴がグラップラー
「最後は君だが――ん?」
何やらエオニアの様子がおかしい。
暫くの沈黙の後、エオニアはこんなことを言った。
「天魔召喚士――
「へ……?」
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