第九話 新たな嵐の予感
第一回部活動の後、その後約一ヶ月が経過した。その間特に悪魔は出現せず、極めて平和な日々を過ごしていた。悪魔が出ていないと言うことは当然アンナや橙花の仲間である生まれ変わっている人も見つからないと言うこと。そして対悪魔部である歴史研究部もただ無駄な時間を如何に過ごすかと言う暇人の集まりと化していた。ただ唯一、生徒会長たる橙花は生徒会業務に追われていた為、もっぱら戌亥とアンナの二人だけの部活と化していた。そんな中、戌亥は最近覚える違和感にそわそわしていた。それはアンナが変な挙動をしていること。ジッと見つめてくることもあれば急に目を逸らして顔を赤くしたりしている。橙花に相談しに行くと、ニヤニヤしていながらも、時折り深く考えこむ。そんなこんなで一ヶ月が経ったわけであり、時期はいよいよ学校生活2年生3大イベントの一つであり、1学期最大のイベント、体育祭の季節が迫ってきた。2年1組では、組分けと参加種目決めを行なっていた。
「よーしお前らー。クジは引いたなー?よし・・・見ろ!」
教壇に立つ担任、朱子崎響子の号令によって一斉にクジが開かれ、歓声と絶叫が入り混じる。そんな中、窓際の最後尾2列。即ち戌亥とアンナはお互いのクジを見合っていた。
「えーと・・・?俺は西軍だったな。アンナはどうだ?」
「えーと・・・?あ、私も西軍だ。よろしくね、戌亥君」
「おう。よろしく。・・・それで、アンナはどの種目に出るんだ?」
黒板に目をやると、そこには自分達の出場する種目が書かれたいた。その内容はーーー
全員参加 学年別徒競走
自由参加 玉入れ
綱引き
障害物競争
騎馬戦
応援合戦
パン食い競争
選抜 組対抗全学年選抜リレー
ーーーだった。このうち、「学年別徒競走」は全員参加なので省かれ、「組対抗全学年選抜リレー」は足の速い順で選抜される為これも省かれる。ちなみに、戌亥もアンナも選抜には選ばれていないので、自由参加から一つ選ぶことになる。
「うーん・・・どれに出ようか迷ってるの・・・私あんまり運動得意じゃないから・・・」
その言葉を聞いて戌亥は苦笑いになった。
(えぇ・・・お前、悪魔相手にあんな動きしておいて運動が得意じゃないって・・・)
と、心の中で呟くと、それを見越したかの様に、自己弁護を始めるかの様に慌てて話しだした。
「今、『悪魔相手にあんな動きしておいて運動が得意じゃないなんて・・・』って思ったでしょ。ま、言いたい事もわかるよ?でもね、あくまであの動きができるのはジャンヌ・ダルクのチカラを使っている時だけなの。だから、通常の私の身体能力は普通の女の子並みなのよ」
「なるほど・・・んじゃ、応援合戦はどうよ?ジャンヌ・ダルクなら旗持ちが似合うだろ?」
「なるほど・・・良いかも。確かに、それなら私の・・・いえ、ジャンヌの記憶でできるかも」
と、まぁそんなこんなで参加する種目が決まり、部活の時間。歴史研究部の面々は体育祭の話しで盛り上がっていた。
「と、言うわけで、私は応援合戦に出ることにしました。戌亥君の勧めで、ジャンヌの記憶を使えばってことで旗持ちするんです」
「なるほどな。それは良い。アンナ君なら、立派にやれるだろう。で、君はどうなんだい?戌亥君」
「ん?あぁ、俺は騎馬戦っすよ。男子の人気が無さすぎて、消去法でそれしかなかったんで」
「そうか・・・去年は騎馬戦が1番人気だったんだがな・・・」
そう言うと悲しそうな顔をする橙花を見て二人は話題を無理やり変えようとした。それも二人同時に喋り出した。
「そう言えば、会長はどっちの組で、種目何にしたんです?」
「そう言えば生徒会長さんはどちらの組で、種目何にしましたか?」
「・・・・・君達って奴は・・・ま、良いか。私は東軍だ。つまり、二人とは敵だな。私が参加するのは『学年別徒競走』、『パン食い競争』、そして『組対抗全学年選抜リレー』だな」
「パン食い競争って・・・今時そんなんあるのかよ・・・驚きだよ」
「ていうか、当然の様に3種目出るって・・・流石生徒会長さん・・・」
「・・・・なぁ、そろそろその『会長』とか『生徒会長さん』って言うのやめて名前で呼んでくれないか?」
「・・・・・・なら、橙花先輩で」
「・・・・・・じゃあ、姫夜麻先輩で」
こうして平和な部活は終わり、またしばらくは平和な時間が続いた。しばらくは体育祭練習があり、およそ2週間が経過して・・・ついに体育祭本番がやってきた!
薄暗い大広間。中音の玉座に座る謎の人影が話始めた。その前には3つの影があり、跪いていた。
『もうすぐ奴らの気が緩む催しがある。貴様らはそこを狙って襲撃しろ。今度こそ奴らの命と能力を奪うのだ。良いな?』
「「「はっ!我らが王のため!この身を賭して臨みましょう!!!」」」
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乙女と悪魔の聖心戦争 @himeyuli
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