第20話 ハレー彗星

ふと思い出した、ハレー彗星すいせい


ご存知ですか?

ある一定の期間で、繰り返し地球に接近する彗星です。


前回の最接近は、矢芝が高校生の時でした。



はい、そこ!

ウィキペディア調べて計算しない!



彗星にちなんだ化粧品とか、そのCMソングとか出ていまして、ちょいとした盛り上がりを見せていました。


高校の部活終わり。

すっかり暗くなった頃。

さあ帰ろうと、仲間たちと部室に向かって歩いていた時、


「君たち! ハレー彗星を見ないか?」


校舎の窓から望遠鏡を出して、

理科の先生が、手招きしていました。


話題のハレー彗星が見れる!


矢芝たちは飛びつきました。

順番に、望遠鏡を覗きます。


「えっと……どれ?」


見えるのは、モノクロの動かない星ばかり。


「小さい渦が見えるだろう?」


先生に言われて、目を凝らすと、


……あー、

何かすっごい小さいのが、ぐるぐるしてる。


…え? これ?


彗星って言うくらいだから、

あの尾を引く箒星ほうきぼしが見られると期待していた矢芝(高校生)は、少々がっかり。


他の仲間の反応も、似たか寄ったかだったので、


「これはなかなかとらえられないんだよ。すごいだろう、こんなにはっきり渦が見える」


と、先生は力説。


「……へー」


女子高校生たち、薄いリアクション。


先生、ごめん。

そのすごさ、大人になった今なら分かります。


渦巻いてるってことは、こっちに向かっているってことで。


本当に本当に、地球に近づいているってことで。


約75年に一度、地球に接近するハレー彗星は、

人生のうちで2度見られるかもしれない、稀有けうな彗星らしくて。


その1度目のチャンスを、与えてもらえたというのに、めっちゃ薄いリアクションでごめんなさい。


「星の王子様」と、生徒たちにあだ名されるほど、星が好きだった先生。


お元気ですか?

今でも、星の写真を撮られてますか?


あれからずいぶん年月が過ぎましたが、矢芝はあの小さい渦を、ちゃんと覚えていますよ。


ハレー彗星、次の接近は、

2061年だと予想されているそうです。


矢芝は……

もし、その時まで寿命があったのなら、

また見てみたいと思います。


そこ!

電卓しまいなさい。


ちなみに、

古来より箒星の接近は、凶兆といわれているそうです。



……あれ?


そーいう終わり方?
























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