第5話 左右盲

矢芝は左右盲さゆうもうです。

左右の判断が、とっさにできない人です。

左右識別困難ともいうそうです。


方向オンチでは無いんですよ。

(多分)

どっちに曲がるかは、分かるんです。

その「どっち」の方向が、「右」なのか、「左」なのか、パッと出ないんです。


普段の生活で、特に不便は無いのですが、困るのは道案内です。

しどろもどろになってしまいます。

下手をすると、左右逆に教えてしまって、道に迷った人を更に迷わせてしまいかねません。


…そんな妖怪が居たような…


ですので、行ける範囲であれば、一緒に行って案内した方が確実ですし、自分の気が楽です。


…妖怪にならずに済みますし…


こんな矢芝でも、はるか昔に運転免許を取りました。

車に乗る時は、必ず右腕に時計をして、「右」と言われたら、「腕時計をしてる方」に曲がると覚えこみ、何とか免許を取りました。


「左右盲」という言葉があると知ったのは、つい最近のこと。

そして自分と同じ状況の人が、たくさん居たということに、感無量でした。


車の教習中、矢芝のように腕時計などで、左右を認識していた方も多くて、首もげるほどうなずきました。

ですよね、ですよねーー!!


今は、車にはカーナビ、スマホにはマップが入っていて、道案内をするという機会が、少なくなりました。


それでも時々、すごくローカルな場所とか、大きい施設の中などでは、道(場所)をたずねられることがあります。


その時は、矢芝も一緒に行って案内しますので、どうぞ遠慮なさらないで下さいね。


…妖怪にならないためですから…





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