第2話
"もし一つ願いが叶うなら君はどうする?"
その願いを叶えることができる(?)ことになった僕。少し探してみるために外に出ることにした。
ただの静かな住宅街。その先には子供の頃よく遊んでいた公園があった。
日々の仕事に忙殺されて最早視界にも入っていなかった。
最近仕事を辞めた。ただただ辛かった。ブラック企業ということに辞めてから気づいた。
新しい職を探そうという気も起きない。
その小さな公園に一人、七、八歳位の女の子がブランコを漕いでいた。
僕が一人公園に入りチラッと女の子を見るが何も反応しない。
「ねえ」
いきなり女の子に話しかけられた。
「えっ、ど、どうしたの?」
一ヶ月ぶりくらいに口から言葉を発したと思う。
「わたしのお話聞いてくれる?」
私の返事も聞かず女の子は話し始めた。
「わたしもう家にかえりたくないの。」
「え…?」
「わたしはそこの小学校にかよってるんだけど、いつもにこにこえがおでいなきゃいけなくてね、ちがうってじぶんで言えなくてずっとうなずかなきゃいけないの。それにおかあさんもわたしのことキライなの。もうつかれたから家を出てここにきたの。」
「…そうなんだ…」
どうしても自分の子供のときの姿と重ねてしまう。僕もそうだった。全くもってそうだった。
「君は、周りに味方はいるの?」
「味方…?」
「そばにいて心地いいって思う人。」
「……そんな人、いないよ。」
「うん、僕も。」
女の子はじっとこちらをきょとんとした顔で見ていた。
「でもね、何も楽しくなかった訳じゃないよ。生きるのに自分以外の人間なんてほとんど必要ない訳だし。この世には人間なんてごまんといるんだよ?たまたま君と合わない人しか周りにいなかっただけ。無理に取り繕わなくていい。ずっと一人でもいい。別に味方がいてもいなくても楽しんだ者がちでしょ。」
女の子は更に顔をきょとんとさせたが次第に泣きそうな顔になり答えた。
「それでおにいさんはしあわせなの?」
「…いやあ別に。幸せなんて求めなくても生きてるだけで偉いって。というか今幸せって何か探してる途中なんだよね。」
「…ふうん。ふふっ。そんなもんか。」
「そんなもんよ。」
僕は最後にこう聞いた。
「…ねえ、もし一つ願いが叶うなら君はどうする?」
「えっ、急に!?うーん……夢の国に行きたいなぁ。そこなら一人でも楽しそうだもの。」
「…そりゃいいね。」
女の子はいきなり立ち上がった。
「私学校行ってくる!」
「行ってらっしゃーい。」
駆けてゆく女の子の姿を見送り、我ながらよく言えたな、と自分に感心した。果たして本心から出た言葉かは分からない。ただ適当に生きるというのはいいな、というのだけ思った。
夢の国か…そこなら日常とやらも面白くなるのだろうか。
僕はまた歩き出した。
そして思った。
さっきの場面、小学生の女の子と二十代の男が喋ってたのは他から見たら僕結構不審者だったんじゃないか、と。
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