第2話 未知の器 美濃部春

 「美濃部さん…!どうしてここに?」

「相変わらず『春ちゃん』って呼んでくれませんねぇ。まあ、そういうとこも

センパイの良いところですけど。…ああ、ここ『センパイ』ばっかでしたね。

去年まで七星第三中学にて生徒会長を務めてました。ですが、ここでは

そういう野望は一切無いのでお気になさらず。私はこの子にベットしたので。」

そう言って春は、横の緋那の肩をポンと叩いた。本人は嬉しそうな表情だ。

 美濃部春。黒のロングヘアーではあるものの、インナーカラーの赤色の主張が

とても激しい。猫の様な真ん丸の瞳は、一点の曇り無く輝きを放っている。

制服姿は上のブレザーだけで、下は黒いミニフレアスカートを着用している。

どうやら服装の感じは、しっかりとこの場所に合わせて来たようだ。

私が卒業してからは彼女の事を聞いていなかったが、発言から察するに

無事に一年間の任期を完了したように聞き取れた。

 「待って!その名前聞き覚えがあるんだけど…そう!よくテレビで聞いてた!

『七星のアイドル生徒会長』って、あなたの事?」

神川副会長が口を挟んだ。どうやら私の知らない一面があるようだ。

「あれ、見てたんですかぁ?この地元だけのローカル番組だったんですけど。

通ってた中学がやけに不人気だったんです。この地域で一番少ない生徒数で。

手っ取り早く生徒を集める方法がこれしか無かったんですぅ。ほら、私とても

可愛いので。ちょっとアピールしてみたらすぐ話題になっちゃって。」

確かに春の顔は可愛い。私の周りに顔を見せても同じ事を言うだろう。だが、

私が居た頃は比較的真面目な性格で、自身を売りにするなんて突飛とっぴ

発想をするような生徒ではなかったはず。一体何があったのか。いや、もしくは

この感じこそが本来の春なのだろうか。いずれにせよ相手方に回るのだ、

警戒しておくに越した事はない。あちらからの反応も特に見受けられないまま、

顔合わせは終わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る