生徒会戦挙II

百合丘 城奈

第1話 新たな風

 目の前にいる、背丈がやや同じくらいの金髪ロングのお嬢様。この子は次代の

生徒会長候補として現生徒会長が推している。どうせなら一目会っておきたい、

というこの後輩の一言で、私、北見海香は生徒会室に呼び出された。

 「御足労ごそくろう感謝申し上げます。一年の桐生院緋那きりゅういんひなですわ。ご機嫌よう。」 

お嬢様の挨拶でしか見ないスカートを少し上げる所作しょさ。まだ幼さはあるものの、

その目つきは姉に似て凛々しさを秘めている。なるほど、確かに姉妹のようだ。

「二年の北見海香。よろしくね。」

後輩とは言えこれから競っていく相手、そんなに仲良くするつもりは無い。

…現生徒会長はやけに馴れ馴れしく私に接してくるけれどね。

 「海香、改めてこの緋那が次代の生徒会長に立候補するわ。貴女を応援したい

気持ちはあるけれど…、やはり私の身内。可愛い妹の味方でありたいのよ。」

現生徒会長である桐生院覇那は、勝つためならどんな手段も平然と使う女。大方、

この妹も自身の後釜として育て上げるために呼び寄せたに違いない。…多分。

あれだけ私を評価する様な言動をしておきながら、やはり私に生徒会長の座を

奪われる事に抵抗があるようだ。

 「お止めくださいな姉上…もう聞き飽きましたわ!ところで、実は皆様に

お目に掛けたい方がもう一人…。私の初めての学園でのお友達ですの!

お呼びしても宜しいかしら?」

はたから見ても機嫌が良い会長が頷くと、手を鳴らす合図の後に生徒が入ってきた。

「初めましてセンパイ方。一年の美濃部春みのべはるって言いますぅ。」

名前を聞いた瞬間に、私は後ろを振り返った。聞き覚えしか無いその名前。

中学時代に、生徒会長だった私を最後まで支えてくれた唯一の後輩の名前。

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