フォールのおはなし

義為

本編

 むかしむかし、とある国の森の中、大きなドラゴンが暮らしていました。

 大きな体で、つややかなうろこは、赤や黄色に輝く、森の葉っぱのようでした。


 ある日、森一番のおじいさんの木が、言いました。

「もう、どんぐりはやれないよ」

 ドラゴンは聞きました。

「どうして?」

 おじいさんは答えました。

「疲れちまったのさ。でも、眠れなくってなぁ」

 少し考えてから、仲間たちに向けて、こう言いました。

「みんなも、眠ろうよ」

 でも、くまさんが言いました。

「僕も、眠れなくって」

 そんなときです。

 南の国の王様がやってきました。

 ひどく痩せていて、汗をかいていました。

「こんにちは、ドラゴンさん。

 私の国に遊びに来ませんか。

 遊びたい盛りの子どもたちがいるんです」

 

 ドラゴンは、少し悩みました。

 長くここにいて、楽しかったのです。

 でも、決めました。

 色んな人との出会いもまた楽しいからです。

 そして、ドラゴンは南の空へ飛び立ちました。


 空と海の向こうへ、溶けるように、あっという間に。

 

 青い空から白い雪が降り積もり、みんなは眠りました。

 

 ドラゴン、フォールは、語っては飛び立ちます。

 そう、彼は行ってしまうのです。

 知っていますよね、秋のことを、フォールと呼ぶのです。

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フォールのおはなし 義為 @ghithewriter

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