第3話 解放の焔

炎は、再び揺れていた。彼女は目を開け、今目の前で燃え続けるろうそくの火に意識を戻した。幻想と現実が入り混じった体験から、彼女は少しずつ現実の世界に引き戻されていく。しかし、彼女の心の中には、かつて感じたことのない解放感が広がっていた。


揺れる火はまるで語りかけるように、彼女にその先へ進むことを促しているようだった。今や炎は、ただの灯りではなく、彼女の魂そのものを照らす存在へと変わっていた。彼女はその火に引き込まれるようにして、再び手を伸ばした。その瞬間、彼女は自分が何かを超えたのだと感じた。


彼女は静かに立ち上がり、無意識にろうそくを手に取ると、部屋の隅々を照らしながら歩き始めた。燃え続ける炎に包まれながら、彼女は一歩一歩、自分の心と向き合うように歩を進めていく。壁に映る彼女の影は大きく揺れ、炎が生み出す光と闇が彼女の内面を象徴しているかのようだった。


彼女はその影に向かって微笑む。かつては隠し、恐れ、避けていた自分の一部。今はそれを抱きしめ、受け入れることができる。揺れる火が導いてくれたこの旅路は、彼女を新たな自分へと変えるきっかけとなったのだ。


ろうそくの炎は、次第に小さくなっていく。しかし、その光が消えることへの恐れは、彼女にはもうなかった。燃え尽きる火が彼女に語りかけたのは、変わり続けることの美しさと、終わりに向かう中での新たな始まりの予感だった。


「ありがとう……」


彼女は静かに呟き、揺れる火に最後の感謝を捧げた。その言葉と共に、ろうそくの炎は静かに消えた。しかし、心の中に灯った光は消えることなく、彼女の内側で静かに燃え続けている。


その火は彼女を新たな道へと導き、彼女は揺れる火が教えてくれたすべてを胸に刻みながら、次の一歩を踏み出したのだった。

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揺れる火 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92

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