第9話

「ただいまー」


用事が終わり、家に着いたのは夜の9時半。



スクールカバンを自分の部屋に置き、リビングに入ると




「瑞穂おかえり〜」


「ただいま智くん」



8歳上の兄がいた。



智くんは美容師をやってて、たまに雑誌に載る人気のカリスマらしい。




「今日は残って練習しなかったの?」


「うん。たまにはねー」


「へー。」



お風呂入ってこよーと。



そう思い、自分の部屋に戻ろうとしたら、




「みずほー、ちょい待ち」


「なにー?」



智くんに呼び止められ、振り返ると、いきなり人の髪の毛を触り出すその表情は美容師。




「ちぃとここが気になる。はいーゴミ箱持ってー」


と、ゴミ箱を持たされ、そのまま髪の毛の下でキープ。

それはもう手慣れたもの。




「…智くん、どんだけこのボブスタイルに命かけてるの」


「それはね瑞穂ちゃん。いつも瑞穂ちゃんが可愛くいてもらうために智くん頑張ってるの。」


「へー、それはどうもありがと」



心こもってなーい!なんて言いながら笑う智くん。



智くんには言わないけど、黒髪のボブスタイルは何気とても気に入っている。


内側に入るように切ってもらってるから、外に跳ねなくて、いつもキープされる。





「はい終了ー」


「ありがと。」


「ん。お風呂入って寝んしゃい」


くしゃと撫でられたまま頷き、着替えを取りに部屋に戻った。



両親は海外赴任でいない。智くんと二人暮らしを始めてから、2年が経過した。







あーぁ、明日も学校か…。



めんどくさ。

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