まれにみるクソ女 〈パール・ハーバー〉

 これまでに観た戦争映画の中でワースト5をあげろ、と言われたら、ぶっちぎりの1位に推薦するのがこの映画です。

〈プラトーン〉とか〈空軍大戦略〉とか、有名どころでも「内容全然覚えてない」っていう映画は多いんですが、登場人物のクソっぷりで嫌でも記憶に残っているのが〈パール・ハーバー〉。


 タイトルからわかる通り、真珠湾攻撃後、海軍航空隊に入隊した二人の青年パイロットの友情モノ…の、はずでした。

 女が登場するまでは。


 主人公格の二人は、識字困難だけど天性の才能がある、野性的なブロンド青年と、優等生的な雰囲気の茶色の髪の幼馴染。目はいいのに字を読むのが苦手という親友のために、入隊前の視力検査で検査表のアルファベット(アメリカの視力検査はランドルト環Cではない)を後ろからこっそり囁いてあげるという仲の良さ。

 …女が登場するまでは。


 最初は、野生児の方がその女と付き合い始め、それを喜ばしく見守っていた幼馴染でしたが、ブロンドの親友が墜落死したという報せを受け、ショックを受けた彼女を慰めているうちに男女の仲になってしまう。


 が、墜死は誤報で、元の恋人が帰ってくる。


 ここまではいいんですよ。

 俺の女を寝取りやがってと激怒されるものの、だってあんたは死んだと思われていたんだし、観ているこっちも、それは彼女も幼馴染も悪意があったわけじゃないし仕方ないよね、と思えた。


 元鞘に収まるかと見えたものの、彼女が幼馴染の子供を宿していることが判明。

 子供の父親として、幼馴染の方と…と言い出す彼女。


 ここまではいいんですよ。

 なにせ1940年代だし。未婚の母なんて現在よりずっと外聞が悪い(その前に、「将校なのにどうしてコンドーム使わなかったの? 配られてるのはわかってるんだからね?」と思わなくもないが、まあいい)。幼馴染の方も責任を取る気でいた。辛い決断だが、理解はできる。


 が、気持ちはあなたの方にあるの、みたいなことを元カレに言い出す彼女。


 この時点で、男二人(+女ひとり)の関係は修復不可能なほどぐちゃぐちゃに。


 そうこうしているうちに終盤戦へ。日本軍との空中戦で、幼馴染は親友を庇って撃たれて死ぬ。


 ラスト、生まれた男の子に幼馴染の名前をつけて、育てようとしている、遺された二人の姿が――


 映画を観終わった後。一緒に〈スターリングラード〉も観に行ったことがある友人(♀)と無言のままドトールに入り、ケーキセットを前に、

「…ねえ、ひとこと言っていい?」

「…いいよ」

「…あの女クソじゃねえ?」

「…ああ、正真正銘クソだわ」

 と確認し合ったのを昨日のことのように覚えています。


 自分はクソだと思っていても、相手はいい話だったと思っているかもしれず、あまりけなすようなことは言いたくないのですが、この映画だけは限界を超えていた。

 百歩譲って元カレの方が好きでも、気持ちは墓場まで持っていけ! お前のやっていることはどっちにも失礼だ!

 …制作陣は何が描きたかったんだろう?


 男の友情に女が絡むとロクなことがないってのは、〈ダーク・ブルー〉でもあったなあ…。

 同じく第二次世界大戦の、こちらはヨーロッパ戦線。

 チェコの亡命パイロットが同じ女に惚れて仲が険悪になり、若い方が年上を庇って死ぬ。


 別にね、私はこのイギリス人女性に対しては悪印象はもたなかったかな。精神的に割とハッキリした女性で――たしか人妻じゃなかったか。戦後は復員した亭主のもとに戻っていく。


〈ダーク・ブルー〉という映画自体、生き残ったその年上のパイロットが、救国の英雄のはずなのに、共産主義政権の収容所内で回想を語っているという暗くダークて実に救いのない話なので、人妻の不倫ごときに目くじら立てるような余裕は無い。


 女絡みでうまくいった話なんて、〈友情の翼〉くらいしか知らない。

 そうだ、次は〈友情の翼〉の話をしようっと。


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