寝たら死ぬ 〈スターリングラード〉

〈スターリングラード〉って映画は私の知っているだけで2本ありまして、今回は古い方。


 時は第二次大戦中。ヒトラーのおじさんが何をトチ狂ったか今度はソ連に狙いを定めて(それまでは航空戦でイギリスを屈服させようとしていて失敗した)――って、ナポレオンといい、西ヨーロッパの独裁者って、権力握るとどうしてロシアに食指を動かすんでしょうね。何か甘い匂いでもしてるのか?


 んで、一時期はいいところまでいくんですが、ソ連に反撃され、戦線はスターリングラードで膠着状態に陥る。


 そのうち冬が来る。スターリングラードの第6軍は冬季装備を持ってない。街はどっちに包囲されてるんだったか――とにかく双方がお互いに味方にあの手この手で物資を届けようとするんだけどうまくいかない。そうこうしているうちに本格的に雪が降り始める。食料はどんどん乏しくなる。とにかく寒い。爆撃のせいで市街が廃墟と化していて、そこに狙撃手がいるから、ウッカリ出歩くと撃たれて死ぬ。雪が積もっていく。食べるものがない。辺り一面雪。名前が「グラード」だからって理由でヒトラーが降伏を許可しないので投降もできない。


 …ってな状況を、延々3時間近く? 見せられる映画です。


 私、北海道西部の出身でして。世界有数の豪雪地帯なんですよ。雪が降ると、キレイだなーっていうよりゲンナリするんですよね。ああ、また冬かって。雪かき大変だし、腰痛めるし、除雪車が道路の雪をかくと玄関前に雪の壁ができるからそれをかかないと外に出られないし。屋根からの落雪でストーブの排気口が塞がると二酸化炭素中毒の危険があるから、外が吹雪だろうと定期的に家の横も雪かきしないとならないし。一面の雪で特に面白いものもないし。足は冷えるし、ストーブの熱の届かない廊下は氷みたいに寒いし。


 この映画は夏に観たんですけどね。「寝たら死ぬぞ」と思いました。

 その後しばらく、実際に冬が来て、寒いなーとか思っても、

「…だがスターリングラードはもっと寒かった…」と呟いていました。


 雪と廃墟しかない映画なんですが、これに出てくるドイツ国防軍の少尉が綺麗なんですよ。女性的なというか、ちょっとあどけないというか、やさしい顔立ちをしている。

 で、映画のラストのあたりで、この少尉と、耳のでかい伍長(と勝手に呼んでいる)が、どうやったのか、包囲を抜け出してフラフラと雪原に出て行くんですが、食料も水もないので、結局、見渡す限りの雪景色の中で倒れ込んでしまう…ってとこで、伍長が少尉を膝枕してた映像があったように記憶してるんですけどねえ。

 なので、私の中ではこの映画はちょっぴりブロマンスというか、なんというか。


 あと、映画の中でドイツ軍兵士たちが前線へ向かう輸送車の荷台で、「モミの木オー・タネンバウム」という歌を合唱するシーンがあるんですが、一緒にそれを見ていた父(高専出身)が、

「おっ。お父さんこれ歌えるぞ」と言ってドイツ語で唄ったのにはびっくりしました。

 高度経済成長期、機械工業系の共通言語はドイツ語だったんだなあ…。ドイツの科学力よ…。


 私も大学の講座で初めてドイツ語をかじったのですが、ドイツ人の先生に、

「発音がきれいですね。前にどこかでドイツ語を習っていたんですか?」と聞かれ、

(い…言えない! 戦争映画を音声原語・日本語字幕で観てたから耳だけはドイツ語に慣れてるだなんて言えない…!)と震えていたのを思い出します。


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記憶で語る戦争映画 吉村杏 @a-yoshimura

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