第3話 ゆらり
熾火
ようやく見つけた嘗ての師は、私の記憶に残る彼とは全く変わり果てていた。
「私はもう、しがない教師でしかないよ。何も期待せんでくれ」
くたびれた服装、ほつれた毛髪、目元の隈。彼は現役だった頃には浮かべたことのなかった、気の抜けた笑みを見せた。
「では先生、あなたは何も感じなくなったと仰るのですか。この世界の荒廃を、人心の惑乱を目の当たりにしても、心動かぬと?」
私は彼に訴えかけた。この乱れ切った世の中を今一度整えられるのは、彼しかいない。
先生は私の訴えをじっと聞いている。
私にはわかっている。彼の目の奥の、ちらちらと赤く光るものの正体が。
熾火のように燃え続ける熱く輝く炎が、再び薪を焚べられるのを待ち続けていたのだということが。
陽炎がたつ。
お題「熾火」
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