第7話
ワイズマンとクリストフは
必死に道を下っていく。
それは勢い任せで滑り落ちるような態勢で。
濁流のような雨の中、身を震わせる。
時間はない。悩んでいる時間すらもない。
その社会体制不満を多く持つものが多かった。
集団で抗議、デモのようなことも多くあったが、唱えるべき相手は島の外におり、
その声は届かぬ仕舞いであった。
問題行動、政権に対する反感はかなりのものだ。
昂る感情を抑える人々。
その多くの声が募る。
そんな夢のようなことは
実際に起きるのだろうか。
空を仰ぐように雨空を覗く。
波が徐々に荒くなりつつある。
この場所から自分の家のあるB地区が見渡せる。
父を吊るす処刑台が簡易的に造られている。
そんなことあってはならない。
力を振り絞り、ひた走る。
その時、甲高い鐘の音が聞こえる。
「C地区、防波堤を乗り越え波が押し寄せてる」
声を枯らすように誰かが言った。
その声の主はすぐに気がついた。
港であったケビンだ。
怒りを奮起するかの如く雷が鳴る。
その轟音は耳を震わせる。
クリストフがいった。
「ネプチューンだよ、兄ちゃん」
荒々しく鳴く海には、
怪物のような何かが海面に現れていた。
「そんな、伝説じゃ」
「伝説上の怪物だ」
生唾を飲み込みクリストフは言う。
「ということは、」
「そういうことだ。きっと、やばい。」
何かが起きる。
天変地異のような出来事が起こりうるのだ。
フィッシュランドの便り 雛形 絢尊 @kensonhina
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