第6話

次第に雨は強くなっていき、

雷も近づいてきた。

泉まで早歩きで向かう。

曇天の色の空はあまりにも暗く、

地面を鳴らすようなその音は鼓膜にも響く。

やがて地面は歩きにくくなっていく、

ぬかるみのようなその道を

滑るような形で降りていく。

近くの牧場では羊が大勢走り回る。

それと並走するようにワイズマンと

クリストフは走りだした。

少し地面が崩れやすいその道は

やや斜面になっており、

慎重に慎重に降りていく。

それから数分坂を下るのだ。

両端を草が覆うその一本道をひた走る。

水滴が散らばっていく。

「あれだ!」とクリストフは言った。

そう、奥深い青の泉、あまり大きくはないが

そこに泉が現れた。雨は徐々に強くなる。

「祈ろう」とワイズマンは手を合わせる。

必死の祈りを捧げているのだ。

しばらく目を瞑ったのち、

祈りの根本に辿り着いたような、

不思議な感覚にとらわれた。

閃光が散るような、

不思議な景色が脳内で見える。

それは虫の知らせか?

はたまた吉報の知らせか?

「ねえ、兄ちゃん、なんか聞こえるよ」

慌てた様子のクリストフは問いかけた。

再びの島内アナウンスだ。

この場所からだと聞きづらい。

少し登った先まで行く。

『本日、17時より、アンダーソンの処刑を

執行する。場所はエリアB地区。

繰り返す本日、』

父だ、父が処刑されてしまう。

ワイズマンとクリストフは目を合わせ、

その道を戻る。

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