第4話

ここフィッシュランドでは前述の通り、

たくさんの魚が獲れた。

年間漁獲量は類い稀ない記録を樹立し、

経済的にも潤っていた。

しかし、一連の騒動の後、

憤怒の心を持った現市長がこの島の

排他的経済水域、そう、

この島の周りに殺魚剤を

これでもかと撒き散らした。

以降、海には近づくな、と言われるほど

汚染された海へと変わってしまった。

それから一年、生態系は形を変えてしまい、

新鮮な魚、貝や海藻なども一切口に入れることができなくなってしまったのだ。

その問題は世界でも問題視され、

フィッシュランドは孤立を深めていった。

汚染水が世界中の海へと

流れ出してしまうのだ。

我々の生活源は海から離れ、各国から果物、

食用肉を仕入れ、魚介類は

検閲で却下されてしまうようになった。

近頃はその汚染水も海水の影響で

薄まりつつはあるが、

その居た堪れなさは心外である。



父は名手とされ、この港で一躍を担っていた。

父は仕事熱心で仲間内からも信用されていた。

しかしある時事件が起きたのだ。

これで漸く、点と点が結ばれる。


前市長である彼の食べたイワシが父親の

獲ったものであると発覚したのだ。

それから父は勾留され、

この2年半家に帰ることができない。

父は連行される途中、

必死の抵抗でこんなことを言っていた。

「みんなが、魚を待ってる、

だから、ワイズマン、いつか」

その言葉は遮られてしまった。

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