第3話

10分ほど歩いたところでクリストフは言う。

「もし、お母さんが生きてたら」

「そうだな」

「きっと作ってくれるよ、

何だっけあの食べ物」

ワイズマンも考えてみたものの、

肝心な名前を忘れてしまった。

この町において、

今や、魚という単語でさえも煙たがれる。

ことの発端は2年半前、

この町における政権が、"魚"で

変わってしまった出来事があった。



僕たちの住む島では、フィッシュランドという名前があった。しかしながらそれ以降は、

赤文字でフィッシュの部分が消されたり、

看板の場合は板を上乗せされて

ゴートランドと言われている。

高台の酪農場でたくさんの山羊が

育てられていることから

ゴートランドになってしまった。

話はずれてしまったが、

フィッシュランドという名前はその名の通り、毎日のように魚が豊漁で、活発な港、

僕たちの住む町が有名で

フィッシュランドと命名された。

この町の政権は、代々、

フランシス家が動かしている。

現市長である彼もフランシス家の一族だ。

そんなある時、事件は起きた。

現市長の父が会食中に、

イワシのアヒージョを食べた。

彼が口に入れた瞬間、喉元を押さえて

倒れ込んだのだ。

その原因は後々明らかになった。

毒が入っていたのだ。

彼に対する恨みがあった料理人は

料理の中にこっそりと毒を入れた。

そのまま彼は亡くなった。

そして、政権が現市長である彼に渡った途端、その料理人は死刑を処された。

それがトラウマになったのか、魚が栄えていた街で魚を取ることを禁じられてしまったのだ。

それは国が破産してしまうほどの

大打撃であったが、

一向にそれは許されず、今日に至った。

ワイズマンは1週間に一度、

あのように海へ向かう。

網をこっそりと垂らして、

獲ることができない魚を捕まえる。

しかし、魚というものを持っているだけでも

罰が処されるのだ。

そう、気になっているのであろう、

父の話をしよう。

それと、肝心な話、何故獲れないのかって。

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