第7話

「早く帰りたいんじゃない?恵冬。伊智華ちゃんが待ってるもんね?」


「あーうるせぇ」



瀬大の冷やかしに恵冬は表情も変えずにそう呟く。




「婚約者とか婚約中とか、婚約指輪…とか。一児のパパとか。俺、意外に、そういうの恵冬には似合うと思うけどねー」



一見冷たい印象が強くて無縁のように見えるかもしれないけど。



「その薬指に指輪が光ってる所を俺は見て見たいよ?」



瀬大は、伊智華と一緒にいる時の恵冬の優しい表情を知っていた。



「人の事言ってねぇでお前が誰かとすれば良いだろ。"瀬大さんはカッコいーのに女の影が全くないからゲイかもしれない"って幸太と蓮司がウワサしてたぞ」


「なっ!聞いてたんですかアヤトさん!それ言ったのは幸太っすよ!俺は相槌をうってただけっす!」


「ちょ!蓮司さん!罪をなすりつけないでくださいよ」

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