第20話

「なぁ、祐輔」



グラスが殻になり勘定を済ませて外に出ると、ポツポツと地面にシミが出来始めていた。




「あたし、次の誕生日が来たら、あの時のリュウの歳に追いついちまうな」



そんな様子を眺めながらそう呟いたあたしに、祐輔は「あぁ…」と曖昧に頷いた。



「お前、龍聖の墓参りちゃんと行ってるか?」


「……行ってねーよ」




風からライターを守りながら煙草に火をつけたあたしに、祐輔がため息をついたのが分かったけど、祐輔は何も言葉は言って来なかった。




「色々、分かんねぇままだからな。真実を見付けられたら花でも持ってってやろーかな」






ーーー高島龍聖。



リュウは、祐輔の大親友でーーーあたしの彼氏だったその人の時間はーーー2年前から止まったままだ。



「……警察なんか、デカい顔してるくせに、何もわかんねぇままだし。もう、捜査なんかしてねぇんだろうな」



家に向かい歩き出す。あの十字路で祐輔とはお別れだ。

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