第18話
そんな祐輔の気持ちも分かるけど、あたしにはマナの気持ちも分かる。
「…まぁ、良いだろ。マナがそれで良いって思ってんだから」
「麗。お前の言う事ならアイツは聞くから、しっかり言ってやれよ。話し聞いてやるとかさ」
あたしの言葉は随分と突き放したような言い方に聞こえたようだ。
…仕方ない。あたしは不器用な性分なんだよ。
「誰しも言いたくない事の一つや二つあるだろ。」
あたしの冷め切った言葉に祐輔は少しハッとしたようだった。あたしたちの間に流れたほんの数秒の沈黙。
お互いを良く知るあたしたちにとって、その数秒の沈黙は、重みのある物だった。
「…親父さん帰ってきたか?」
祐輔の言葉にあたしは皮肉めいた笑みを浮かべてグラスに手を伸ばした。
「帰って来るわけねぇだろ。最後にいつ会ったか分かんねぇし」
あたしに家族はいない。あたしと母親を捨てて出てった親父は今は別の家庭があるし、母親も気付いたらどっかの男といなくなっていた。
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