第17話

「降りそうだな」



マナの単車の音が遠ざかって行く。




一瞬見えたイーストの夜空は、暗く重かった。


ポケットに手を突っ込んで、右の太股の古傷に触れる。


…こんな日は、古傷が痛む。



「あたしらも帰ろーぜ祐輔。あたしもさすがにねみーし」


「なぁ?アイツまだ18だろ?ちゃんと高校行ってんのか?イーストの向こうの街で一人暮らししてるらしいけど、家族とかよー、心配してねぇのかな」



祐輔はマナが消えた入り口を見つめながら煙草に火をつけた。



「学校ならたまーに行ってるだろ。マナたまに制服で現れるし」



灰皿に吸い殻を押し付けたあたしは、脚を組み直した。



「学校つまんねーの?って聞いたら"だって面倒くさいし"しか言わねーし。アイツのフォルムなら薔薇色の学園生活が送れると思うんだけどな」


祐輔はマナが心配なんだろうな。

なんせ弟分だし。



「だいたい団体行動に向く奴じゃねーよマナは。三年になってるのが奇跡だとあたしは思うけど」


「不思議な奴だよな。俺の手伝いで足場の仕事とかガレージの仕事やってる方が楽しいとか言ってたし」

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