第16話

「うーんなんか眠くなってきた」



暫く談笑していた。時計の針は一時をとっくに回っている。



「マナはおこちゃまだな。一時くらいでおねんねの時間かよふわぁぁあ」


とか言ってるそばからあたしも大あくびが出た。


「おめぇもじゃねぇか麗。所詮お前らは未成年の小便くさいお子様だ」



え、そう?とクンクンと肩や腕に鼻を近付けているマナ。コイツに皮肉は通用しない。



「眠たいから帰るね。夜中から雨らしいし」



テーブルの端に数枚の札を置いてマナは店から出て行った。



マナが建て付けの悪いドアを開けた瞬間に湿った風が吹き込み、レジの横にある何ヶ月も前からめくられてないカレンダーが揺れた。



「おやすみ、麗さん」



振り返りもせずにそう呟き、薄闇の中にマナの華奢な背中が消えた。

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