第11話

クスりと笑うマナ。



「何笑ってんだよ?」


「何でもないよ、麗さん」



肝心な事は言わないで鮮やかに交わす。単純で複雑。マナはそんな奴だ。



「そういや、うちのババァが麗ちゃんは元気かってうるせぇから顔出してやれば?俺仕事ばっかで寝に帰るようなもんだし」


「祐輔の母ちゃん食っても食っても茶碗に飯よそって来るからな~」



そう言って思わず笑ったあたしに、祐輔もマナも笑っていた。



「お前がひょろひょろだから餓死直前だって思ったんじゃねぇの?うちのババァ、マナトの事も、美男子ねぇーなんて気に入ってたぞ」


「ふふ、本当に?」




マナトはあたしより歳が1つ下の、あたしと祐輔の弟分だ。


一年位前に、あたしは港湾で雨に濡れて捨て犬のように震えていたマナを拾った。



そんな風に現れたマナを祐輔は弟のように可愛がってる。…けど祐輔曰くあたしの事も弟のように可愛がってるらしい。


そしてあたしはマナを子分のようにあしらっているらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る