第16話

見た目はヤカラ。首や胸元や腕にはド派手なタトゥー。顔は整ってるようだけど、表情も雰囲気もどこか尖っていて危険な男。



「……………」


「……………………」



しかも寡黙だ。誘っておいてニコリともクスリともせず俺の正面でビールを飲むミヤさん。




連れて来られたのは路地をクネクネ曲がって現れた渋いダイニングバー。



「何か喋ったらどうですか」


「…………」



とりあえず目の前にあるビールを飲みそう言った俺に、ミヤさんは少し宙を見て何かを考えたような顔をしてから、



「"ノアちゃん"だったか?今日は一緒じゃないんだな?」



思いもしない言葉の暴力を俺に向けて来た。



「…………ミヤさん」


「ん?」


「やっぱ喋らないで下さい」


「……………」



俺の勝手な言葉に、ミヤさんはさっきの10倍呆れた表情をした。




その呆れ顔にうんざりした反面、レジスタンスの横暴なヘッドが随分とまぁるくなったものだと関心してしまった。


以前なら拳やら何やらが飛んで来てもおかしくなかった筈だ。



「青山なら、レオ君といますよ」



早口にそう言って煙草に火を付ける俺にミヤさんは「あぁ」と納得したように唸った。



「あの子は北神の?」


「だったら何ですか」


「いや?お前もそうだけど白石も櫻井も橋戸もやたら気に掛けてるようだったから、どうなってんのかと思ってただけだ」



ククッ。なんだか楽しそうに笑ってるミヤさん。


なんだこの人。会話で笑ったりするのか。と俺は少し驚いた。



「今なんか失礼な事考えてるな?ユキ」


「はい。ミヤさんって喧嘩で負かした相手の頭を踏みつけてる時以外も笑ったりするんだなぁって思いましたけど?それが何か?」

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