第5話

シャワーを浴び終わり部屋に戻ると、携帯が鳴っていた。



着信は千原からだ。



「千原、久しぶりだね」


「三池さん…、お久しぶりです。何度もお電話したのですが」



恐らく要さんからの着信を取る前から、千原は俺に着信を寄越していたのだろう。やっと出た!とは言わないものの、声色はそれが言いたげなように少し疲れていて、少し申し訳なくなった。



「帰国したばかりの所、休む暇なくお電話するのは気が引けたのですが…」



要さんの指示なのに、要さんの顔を立てて申し訳無さそうにしている千原。まだ二十代も前半なのに良くできた男だと感心する。


たしか千原はソルジャーになってまだ2、3年の筈なのだ。ソルジャーになって間も無く関西地区を若手で勢いのあるやつだけで立派に立ち上げた一派。そこのリーダーが千原だ。



「どう?東京は。ていうか渋澤のバディは?」


「渋澤さんはそれはそれは多忙な方なので、かなりハードなスケジュールで動いてます…」


「俺がイタリアに行ってる間都内の事を全て渋澤に任せてしまったからね。絶賛下積み時代のお前たちには良い経験かな」


「渋澤さんは、あなたは要さんに次ぐサディストだといつも口を尖らせながら言っています」


「渋澤にも俺や要さんのようなサディストになってもらわないと。俺がイタリアに腰を据えるには、アイツに日本の現場の権限を委任しなきゃならないんだから」



俺の言葉に、千原は「そんな計画が?」と不安そうに反芻している。



「千原。お前は、渋澤の最強の右腕になってね。工藤さんのように、日本を現場とするソルジャーたちの相談役になって指揮者になるんだよ。お前が、日本のソルジャーと海外のソルジャーの架け橋になるんだ」

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