第23話

階段を二段抜かしで掛け降りて、開けっ放しの出口から飛び出す。



「わぁ!」



そしたら今度こそ誰かと打つかって、あたしはその反動で花壇に片足を突っ込む羽目になった。



「ごめんなさ――…」


「ノア!大丈夫?」



そのちょっと焦った優しい声の持ち主は顔を確認するまでもなく分かった。



「怪我ない?」


「はい、ごめんなさい……シュート先輩も怪我無いですか?」


「大丈夫だよ。前みて歩いてね?」



あたしの腕を掴んで花壇から救ってくれたシュート先輩は、既にアップを済ませたらしく、ひたいに汗が光っていた。



「はい、」



ポケットからハンカチを取り出してシュート先輩に差し出してから「しまった」と思った。



"友達"はこんな事しないのかもしれない。ついいつものくせで……



「ありがとう。でも汚れちゃうからいいよ?」



気付けばシュート先輩の立ち位置はあの頃より遠くて、ティーシャツの裾でひたいの汗を拭く横顔も……もうあたしだけのものじゃないって事を理解する。

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