第5話

それにしても暑い。

九月はまだまだ夏だ。



動いてるのか動いてないのか分からない扇風機しか無い教室が恨めしい。



思わず退学届けで首筋を扇ぎそうになるのを慌てて止めた。

こんなもの誰かに見られたら根も葉も無い噂をたてられるのがオチだ。



スカートのポケットに無理やりそれを突っ込んだあたしは、本日最後の授業を受ける準備を始めた。



「六時間目なんだっけ?」


「数学~。これでやっと帰りだぜ」



前の席の男子の会話が勝手に耳に入って来る。



……あぁ、ヤだなぁ。



数学嫌いなんだよね。

まだ外にいればよかった。でも二時間も外にいたら暑くてとろけちゃう。



そうこう悩んでいるうちに数学の教師が教室に入ってきた。

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