第7話
「さて。早く飯食って掃除して…もう一回寝てやろ。今日OFFだし」
今日の朝飯はアサリの味噌汁に焼いた鮭に白米。ジジィが作る飯は美味い。
早くに奥さんを亡くし、それからは料理や家事をこなしながらこの広い屋敷に一人でいたらしい。
俺は朝が苦手で、朝飯なんて食えた試しが無かった。兎に角かったるい。朝飯を食べる時間があるなら出掛ける直前まで寝ていたい。
「戴きます」
そんな俺が目を瞑り手を合わせてから朝飯を食べるようになるなんて……と、俺が一番自分の変わりように驚いている。
ほんの数週間前の自分では、想像もしていなかった姿だ。
「暇なら床屋でも行ってきたらどうだ。何だその茶髪は。男らしく短く切れ!」
「いぃや切らねぇ。ジジィ。醤油取れ」
「男は黙って坊主にしろ!」
「うるせー!この馬鹿ジジィが!」
「このアバズレ小僧が!」
代官山のカリスマ美容師が計算しつくしてパーマをかけた緩やかなウェーブヘアも、バンビ色の茶髪も……この寺じゃ何の意味もなさない。
どばどば。焼き鮭に醤油を掛ける。
「おい、瞬よ。お前は醤油の川で鮭を泳がせるつもりか」
どばどば。俺の手は止まらない。
俺は味が濃いのが好きなんだ。
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