第6話

力一杯叫んだ瞬間に体から力が抜けた。



……俺は朝が大っ嫌いなんだよ!





重たい体を引きずって10畳の客間を出る。テーブルとテレビと日当たりの良い大きな窓がある明るい部屋。


初めてここに通された時は旅館の一室のように整然とした部屋だったが、住み始めて数週間。テーブルの上には参考書やらレポートやら俺の荷物がどっさりと乗っている。




廊下に出る。立派な木目の滑らかな床。所謂豪邸と言えるこの家は、廊下だって両手を広げて歩ける位に広々としている。




中庭を一望出来る作りの廊下はまるで時代劇に出て来る武士の家のような佇まいで、松やら池やらそれはそれは立派な物だ。





「お?来たな?寝坊助の小僧め」




リビングにたどり着くと、和装の頑固そうなジジィが茶を啜りながらギロりと俺を見やる。




「ジジィ。まだ6時15分だ。はえーよ……」



欠伸をしながらテーブルに付き、置いてあったコーヒーに手を伸ばそうとする俺は、



「痛でっ!」


「矢吹さんおはようございますと言え!!この馬鹿者!!」


「声がでけぇぞ俺の頭をカチ割る気かこのクソ住職が……」



ピシャリと叩かれた手を摩りながらジジィを睨む。



この頑固一徹みたいなジジィは、昨晩俺が通過した寺の住職でこの豪邸の主の矢吹。通称ジジィ。



俺はこの人の元に居候している。

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