1章「音」ーイルマー
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第2話
ギターの音が聞こえた。
いつもよりも遅い時間に電車を降りて改札を出ると、夜が深まったこの駅には以外に人が多いという事が分かった。
大きくも小さくも無い駅の花壇の淵に、アコギを抱えた女が座っていた。
改札の正面に存在する花壇。
駅から家路を急ぐ人々は、いやでもその女が目に入った事だろう。
深くフードを被ってるが街灯の下にいるためか、胸まである亜麻色の長い髪が緩やかにカールしている様子まで鮮明に見て取れた。
耳に入って来る歌声は全て英語で、歌う度に白い息が舞い上がった。
凍てつくような2月の空気に身を震わせた俺は、ライダースのポケットから煙草を取り出してそれに火をつけながら歩き出す。
数時間ぶりに吸った煙草の煙を吐き出しながら、かじかむ手をポケットに突っ込むと先程買った缶コーヒーのお釣りの小銭が裸で入っていた事に気付く。
チャリッ。
口を開けて置いてある、その女のギターケースにコインを投げいれ立ち止まる事なく、俺は家路を目指し立ち去った。
いくらか他にも入っていたコインと俺が投げたコインがぶつかった音は、随分と小気味良く聞こえた。
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