Secret Episode 2 とある魔人が望む世界
そろそろ潮時でしょうか。
私は色鮮やかな魔結晶に囲まれた空間で聖界に来てからの生活を振り返り、手帳に滞在の記録を記していた。
ここは聖界の中でも有数の優国、サンサント王国。ああ、魔界の母国に住む母にも聖界の平和で美しい景色を見せてあげたいですが、そのためには魔界と聖界、人界との間にある大きな溝を埋めなければいけません。その前調査として、人間との共存が可能かを確認するために自ら聖界に来たまでは良かったのですが…。
私たちの主食は人間。もちろん他の食材で飢えを凌ぐことも出来ますが、身体の構造上、定期的に人間を食べなければ死んでしまいます。ですが、自分たちを食べる種族と共存しようという者は少ない気がします。さて、どうしたものか…。
現にこの国は私が最低限の食事を摂るだけで大騒ぎです。精霊王にいたっては国全土に魔力探知を張り巡らす始末…。うん、ここは今後の課題ですね。
私は思いついた課題をノートに記録していく。
前提として私は人間という種族が大好きです。彼らは私たちと同じように理性があり、感情があります。ほとんど同じなのだからきっと仲良くなれるはずなのです。
あ、そうだ!
我々が食べる人間は我々が育てるというのはどうでしょうか。必要な分は自分達で準備する、仲良くなりたい相手のストレスを軽減するのは大切だと思います。うん、これは良さそうです!
これから色々実験をして試していかないといけませんね。まずは若い男女が必要かしら?聖界と人界の方たちには申し訳ないけど、しょうがないわよね。私たちが仲良くなるために必要な実験だもの。
しかし、若い男女を捕まえるにしてもこの国は魔界の入り口まで遠すぎます。そろそろ移動しなきゃ。この店の主人の女性に成り代わってもう半年以上が経ちましたが彼女にも心から感謝しないと…。
今後の方針が固まった時、店の扉が開いた音がした。
よし、今回のお客様を最後の晩餐にしてからこの国を出ましょう。そうと決まればお客様の購入目的が何にせよ金耀結晶と上に穴の空いた箱を渡さないと。この組み合わせは私の瞬間的な魔力放出に反応して、天に光の線が昇るから遠くからでも場所が分かりやすい優れものです。
「すみません、私たち魔結晶を買いに来たんですけど」
入店した銀の長髪の少女が話しかけてきた。
「あらあら、いらっしゃい。どんな魔結晶がお望みかしら、この子たち好みがあるから良いのが見つかると良いのだけど」
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