Secret Episode 1 騎士と使用人の会話

 私はこれまでに多くの若者が騎士を目指し、ある者は挫折し、ある者は騎士になる姿を見てきた。その私も今回ルーク卿がマルタ様に提示した食材調達からの料理という訓練方法は初めて聞いた。

 マルタ様と別れた後、私はルーク卿になぜ料理を課題にしたのか、について尋ねてみた。


「ルーク卿、少しよろしいですか?」

「お、ミーシャじゃねぇか。昔みたくルーカスで良いって言ってるだろ」

「貴方様はもうただの騎士ではございませんゆえ。それよりも一つ伺いたいのですが」

「ん?どした?」

「マルタ様の訓練、なぜあのような形にしたのですか?しかも私が美味しいと言うまでなんて」

「あぁ、それか。アイツはまだ、ただの村娘だからな。身体が全く訓練に向いてねぇんだ」

「でしたら筋力を鍛えるなどするのでは?」

「そうさ、だから"食材調達から"なんだ」

 

 ルーク卿の意図を理解しきれず、ん?という表情をしている私を見てルーク卿がさらに追加で説明を続けた。


「食材調達には体力と技術がいる。そこら辺に並んでいるやつだって生息地は森や崖や砂漠だったりするんだぜ。そんな環境で体力と技術、知識と経験を身に着けさせるのが手っ取り早い。この経験は一人で旅をするときにも必ず役に立つ」

「なるほど、だからなんですね」

「まぁな。しかし、いくらなんでも一人でぽいっはあれだからアイツの見守りは頼んだぜ、ミーシャ。あとすぐに美味いなんて言うなよ、最低でも5回はやらせろ」

「はぁ、仕方ないですね。承知しました」

「十年前のミーシャはもっと怖かったがな。俺なんてなんど泣かされたことか」

「あら、問題児だった貴方が悪いのよ、ルーカス様」


 そう言って私とルーク卿は別れた。明日からの私の業務はマルタ様の成長を見守ることとなった。


 彼女の目的は魔物への復讐。今は故郷を失って日が浅いからそう考えてしまっても仕方ないだろう。しかし最終的には「大切な人を守る」そんな理由で剣をふるえるような騎士になって欲しいと切に願う。復讐にために振るう剣などでは何も得られず、何も守れないのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る