非主流ジャンルのウェブ小説を大ヒットさせる方法!

TSペルペト

SF・ホラー・歴史好きが辿り着いた、ウェブ小説の残酷な真実


 まず、最初に謝っておきます。


 非主流ジャンル・マイナージャンルの作者さんや読者さん、ここに希望を求めてきた皆さん。

 ここには、希望などありません。


 結論から言えば、『現状、非主流ジャンルのウェブ小説を読んで貰うことは、主流ジャンルの非テンプレ小説を読んで貰うことよりも遥かに困難』です。

 その理由は、内容が面白いかどうかという次元の問題ではなく、『ウェブ小説・小説投稿サイトという仕組み自体が原因』となったものなのですから。


 今から、この結論に至った経緯を解説していきたいと思います。

 本音を言えば、非主流ジャンルを好んで読み、書いてきた自分にとっては、あまり受け入れたくない内容です。しかし、物書きとしては向き合わざるを得ない事実でした。



 - - -



 それでは大前提として、まずは、『ウェブ小説における主流ジャンル・非主流ジャンルとはなんなのか』を定義しておきたいと思います。

 これがないと解釈が食い違いまくってしまいますから。


 私が定義した分類は、以下の通りです。

 なお、非主流ジャンルに関しては、個人的に理解の深い分野のみを代表として選出していますが、基本的には『主流ジャンル以外の全て』と解釈して頂けると助かります。


主流ジャンル:

 異世界ファンタジー

 現代ファンタジー

 恋愛・ラブコメ

 現代ドラマ(VTuber)

 SF(VRMMO・スペースオベラ)

 歴史(チートあり)


非主流ジャンル:

 ホラー

 ミステリ

 純文学

 現代ドラマ(VTuber以外)

 SF(VRMMO・スペースオペラ以外)

 歴史(チートなし)


 以上です。


 では早速ですが、明らかにしましょう。


 何故、主流ジャンルのウェブ小説は読まれやすいのか?

 ――それは、主流ジャンルだからです。


 あ、待って下さい。これはネタじゃないです。

 だって事実として、人気のジャンルだから人気なのですから。


 何故人気なのかを推測することは可能ですが、あまり意味はないでしょう。理屈はどうあれ、人気なのは間違いないのです。

 そして、ヒットしているジャンルは、その事実そのものが人を惹きつけますから、軌道に乗れば滅多なことでは衰えません。


 また、上述のジャンルが多くの人を集める傾向は、概ねウェブ小説全体の流れと言っても良く、『なろう』や『カクヨム』、『ハーメルン』、『Pixiv』などでは、有意な変化は見られませんでした。

 (それぞれのサイトごとに、主流ジャンル内での人気の差はありますが)


 そして、人気があるということは読者が多いことを意味しており、必然的に読まれやすくなり、ランキングも上昇しやすくまり、高い評価を得やすくなる、ということになります。


 一方で非主流ジャンルは、この全く逆の現象が起こります。

 読者が少ないため読まれにくく、ランキングも上がらず、高い評価を得るのが難しくなるのです。

 もちろん、(私を含めて)マイナージャンル好みの読者は存在しており、全く評価されないというわけではありませんが、残念なことに母数の違いで圧倒的な差をつけられているのが実情です。


 これに類似した現象は、主流ジャンルにおける『テンプレと非テンプレ』の間にも生じています。

 しかし、テンプレ――つまり人気の題材は比較的流動性があり、同じジャンルの中であれば変化が生じやすくなっています。また、ジャンル自体を好む読者の母数も多いですから、作品が面白ければ相当程度の注目を得ることも十分に可能です。


 ですが、非主流ジャンルにはそれが期待できません。


 さて、そう聞いた方の中には、疑問を持つ方もいるでしょう。


 ジャンルの壁とはそこまで厚いものなのか?

 本当に面白い作品なら、ジャンル問わず注目されヒットするんじゃないか?

 ――と。


 残念ながら、それは違います。『この壁は非常に分厚く、注目を得ること自体が困難』なのです。

 その背景には、『書籍化小説とウェブ小説の読まれ方の違い』と『小説投稿サイトで読者が小説を見つける方法』という、二つの大きな要因が存在しています。


 次の項目ではそれを解説していきたいと思います。



 - - -



 まず、『書籍小説とウェブ小説の読まれ方の違い』ですが、これに関しては、『ウェブ小説ではジャンルの持つ価値が非常に高い』点が挙げられます。


 出版というお墨付きによって一定程度のクオリティが保証されている書籍小説と異なり、ウェブ小説にはそういった保証が存在しません。

 ランキングなどが代替として機能していますが、そもそもの話、ランキングに乗っているのは既に読者から評価された小説だけであり、評価が不足している新作の面白さを示すものではないのです。


 では、『小説投稿サイトで読者が新作・未評価小説を見つける』にはどうすれば良いのか?

 つまり、『検索機能』です。


 新着順から手当たり次第に読みまくるのは、現実的ではありません。

 読者の持ち時間に対して小説の数が多すぎる上に、文字という媒体は内容を理解するのに時間を要します。少なくとも、イラストや漫画のようにはいきません。

 まずは検索で方向性を絞るのが確実です。


 そして、ランキングと検索の両方に共通して重要になってくるのが、ジャンルの存在です。

 本当に面白いかは実際に読まなければ分からないとしても、『好みのジャンル』なら、少なくとも大ハズレは避けられるからです。

 異世界ファンタジーを読みたかったのに、いきなり宇宙船が出てきて冷凍睡眠状態の主人公が描写されるような、意味の分からない悲劇を回避できるからです。


 同様の役割を持つものにテンプレが存在しますが、テンプレが物語の展開の方向性を示唆するものなのに対して、ジャンルは物語そのものの枠組みを分類するものですから、必然的に大きな影響力を持つことになるのです。


 裏を返せば、これは非主流ジャンルにとっての足切りでもあります。

 多くの読者が人気のジャンルに目を向け、的を絞って読みたい小説を探そうとする時、人気のないジャンルは必然的に切り捨てられることになります。

 作者にとっては不条理で残酷な話ではありますが、読者の視点に立てば、効率的に面白い作品を見つけるための当然の行動です。


 こうして、非主流ジャンルの小説は幾つものハードルによって差をつけられ、内容によらず埋もれていくことになるのです。

 (繰り返しになりますが、全ての作品が必ずそうなるという意味ではありません。ただ、主流ジャンルよりも埋もれる確率が高いのは間違いありません)

 では、作者に出来ることは無いのでしょうか――?



---



 この状況に抗う最良の方法は、間違いなく『賞に応募』することでしょう。

 ジャンルの人気によって足切りされているならば、足切りされないことが分かっている、寧ろ、そのジャンルを求めている賞を狙えばいいことになります。

 あなたの作品に光るものがあるならば、畑違いの小説投稿サイトでヒットを狙うより、遥かに有力な手段となるでしょう。


 とはいえ、これは『ウェブ小説でヒットさせる方法』ですから、賞を狙えではタイトル詐欺になってしまいます。

 というわけで考えました、非主流ジャンルでもヒットさせる方法。


 それは――。


 『人気のジャンル、または小説以外の分野で大きな知名度を獲得し、それを活かしてSNSなどで宣伝する』ことです!!!


 はい、身も蓋もありません!

 人気を得たいなら別の方法で人気者になれ、ということです!


 ふざけんな! 書きたいジャンルを、好きなジャンルを捨てろってのか!?

 盤外戦術みたいなやり口じゃなくて、小説だけを書いてヒットさせる方法はないのか!?

 ――そんな声が聞こえてきそうです。


 だから、私は言わなければなりません。


 残念ながら(絶対とは言わないまでも)、かなり難しいです。


 好きなジャンルが非主流ジャンルだった時点で、現在のウェブ小説環境では大きなハンデを付けられている状態ですから、そのまま愚直に戦い続けることは時間の空費に繋がる可能性が高いでしょう。

 良作ならば、傑作ならば、継続して書き続けていれば必ず誰かに評価される――ということがない訳ではありませんが、それよりずっと高い確率で、誰にも見つけて貰えないまま埋もれ続けることになってしまいます。


 現代の娯楽は消費者の可処分時間の取り合いです。

 そんな過酷な環境の中で、アピール能力に欠ける作品が埋没していくのは必然とも言えます。

 ヒットしたいと望むのならば、方法を変えましょう。既にハンデを背負っている状況で、更に自分で精神的な縛りまで入れる必要はありません。


 そして、土壌を整えた上で、改めて書けばいいのです。

 少なくとも、今のやり方を続けるよりも、評価してくれる人が増えるはずです。



 - - -



 という訳で、長くなりましたがここまでとなります。


 本当に身も蓋もない結論になってしまい、非主流ジャンル好きとしては割と切実にショックなのですが、仕方のないことでもあります。

 反応の乏しい創作に打ち込み続けるのは、辛い作業です。

 「趣味でやっているんだから、反応の有無なんて気にならない」――という鋼の精神の持ち主も居るには居るかと思いますが、やはり、個人的にも評価や感想は大きなモチベーションに繋がります。


 それらを総合的に考えた場合、これからも創作を続けていきたいからこそ、好きなジャンルを書き続けたいからこそ、敢えて人気の題材に挑戦してみたり、別の表現手法に取り組むのも選択肢ではないでしょうか。

 書くことで、良さが分かることもあるかもしれません。書くことで、新たなやり方が見つかるかもしれません。

 間違いなく言えるのは、「評価されないし、自分には才能がないんだろう」――と諦めるよりも、ずっと大きな実りを得られるという事実です。


 ご覧下さり、ありがとうございました!

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