第7章: 新しい任務 ―

リカルドとルシアは、解放された村人たちと一緒にダンジョンから出てきた。入り口では、村の衛兵たちが感謝と安堵の表情で彼らを待っていた。


「村の人たちを救ってくれてありがとう」と、一人の衛兵が頭を下げながら言った。「皆が無事に家に帰れるように私たちが付き添います。」


リカルドはうなずき、去っていく村人たちに軽く肩を叩いた。最後の一団が衛兵と共に出発すると、彼はズボンの裾が引っ張られるのを感じた。見下ろすと、助けた小さな少女が彼にしがみついていて、その顔には深い悲しみが浮かんでいた。


少女は6歳か7歳くらいで、乱れた黒髪と少し尖った耳が特徴的だった。唇の間から覗く小さな牙が、彼女に独特で愛らしい印象を与えていた。リカルドは彼女の目線に合わせるようにしゃがみ、優しく微笑んだ。


「両親のところに行った方がいいんじゃないかい?」彼は穏やかな口調で尋ねた。「君をそこまで連れて行くよ。」


しかし、少女はうつむき、か細い声でつぶやいた。「…いないの。両親は…ミノタウロスに…」


リカルドはその言葉を聞いて、胸が重くなるのを感じた。彼は何も言わずに手を伸ばして優しく彼女の頭を撫で、そのまま目を見つめながら微笑んで言った。「じゃあ、君には新しい家族ができたってことで、どうだい?」


少女は驚いたように彼を見上げ、涙で潤んだ目で彼を見つめた。次の瞬間、彼に飛びついてしっかりと抱きついた。リカルドはその抱擁を受け入れ、彼女に新しい責任を感じながら、ルシアにギルドに行く合図をした。


ギルドに入ると、冒険者登録を担当するギャロがカウンター越しに彼らを見て、眉を上げた。


「もうすっかりお父さん気取りか、リカルド?」ギャロはニヤニヤしながら言い、ルシアをちらりと見た。ルシアはその誤解に気づいて、赤面した。


リカルドはギャロの意図がわからず、自然に答えた。「いやいや、ギャロ。彼女は…その、ダンジョンで助けた小さな子なんだ。」


彼は少女の方にしゃがみ直し、軽く頭をポンと叩いた。「そういえば、君の名前をまだ聞いてなかったな。」


周りにいた冒険者たちもこの光景に興味を示し、集まってきた。ルシアとリカルドは少し後ろに下がり、少女にその場を譲った。彼女は周りを見回し、皆の注目に少し緊張しながらも、優しくて可愛らしい声で答えた。


「わ、わたし…アイラニっていいます…」


そのあまりの可愛さに、周囲の冒険者たちは驚愕し、次々とコメディのように地面に倒れ込んでしまった。隣のルシアはその光景に思わず笑ってしまった。


リカルドは皆がなぜこんな反応をしたのか理解できないまま、アイラニに温かい笑みを向けた。「アイラニ、ここにいるみんなはギルドの仲間たちだよ。きっといつでも一緒に過ごせる相手が見つかるさ。」


アイラニは恥ずかしそうに微笑み、新しい家族にしがみついた。ギャロは優しい目で彼らを見守り、リカルドに真剣な表情を向けた。


「リカルド、この子を守るって決めたなら、それなりの責任がある。でも、君ならできると信じているよ。」


リカルドはうなずき、決意を込めて答えた。「分かってる、ギャロ。彼女が安全で…僕と一緒に家で過ごせるようにするよ。」


アイラニはその言葉を聞き、さらに強くリカルドに抱きついた。その瞬間、彼は重要な決断を下したことを感じ、この新しい世界での生活が予想外の驚きで満ちていくことを確信した。


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