第6章:ミノタウロスには容赦しない
リカルドとルシアはダンジョンへの道を歩きながら、周りの木々や茂った草を進んでいた。ルシアは、リカルドを好奇心と心配の混じった目で見つめていた。
「まさかこの任務を選ぶなんて信じられないわ」と、沈黙を破りルシアが言った。「リストの中でも特に危険なものなのに…しかも相手はミノタウロスよ。そう簡単に挑む相手じゃないわ」
リカルドは肩をすくめ、自信に満ちた笑みを浮かべた。「無実の人を捕まえているなら、誰かが思い知らせてやるべきだろ?」
ルシアは驚いた様子で彼を見た。「あなたって、本当に勇敢…それともただ無茶をしているだけかもね」
「どっちもかもな」とリカルドは笑いながら答えた。「それに、君はこの場所に詳しいし、この町で信頼できる唯一の人だからな。だから、報酬は半分ずつってことで、どうだ?」
ルシアはわずかに微笑みながらうなずいた。「それはいい提案ね。それに、あなたって面白い人だわ、リカルド。ただ…ちゃんと気をつけてね」
リカルドはウィンクをしながら言った。「安心しろよ、ルシア。問題に対処するのには慣れてるんだ、たとえこの異世界であってもな」
やがて二人はダンジョンの入り口にたどり着いた。暗く不気味なトンネルで、松明が壁を照らし、どこか重苦しい空気が漂っていた。その場の雰囲気に、ルシアは少し緊張している様子だった。
「ここに隠れて待っててくれ。ちょっと中を見て、どれくらいの数がいるのか確認してくるから。もし何かあったら、君は外で安全だ」とリカルドは小声で指示した。
ルシアは尊敬と心配の混じった表情で彼を見た。「分かったわ。でも、どうか気をつけてね」
リカルドは彼女の肩を軽く叩き、「じゃあ、少し待っててな」と別れの言葉を告げた。
彼は暗闇の中へと足を踏み入れ、手には愛用のマチェーテを握り、全神経を集中させて進んでいった。しばらく進むと、奥から重低音の笑い声と話し声が聞こえてきた。開けた場所に出ると、リカルドは石柱の陰に隠れて周囲を見回した。そこにはミノタウロスの一団が集まっており、いくつかの檻には捕らわれた人々、特に恐怖に怯える小さな少女が閉じ込められていた。
その光景を目にしたリカルドの顔は険しくなった。「子供まで巻き込むとは…許せないな」と、彼の中で怒りが沸き上がり、行動に移る決意が固まった。
マチェーテをしっかり握りしめ、彼は隠れ場所から姿を現し、堂々とミノタウロスたちに近づいていった。距離が縮まると、彼は洞窟全体に響くような力強い声で言った。
「さあ、皆さんお馴染みのセリフだぜ!携帯と財布を出せ!」
ミノタウロスたちは一斉に振り返り、突然現れた人間が何を言っているのか分からず、戸惑った表情を見せた。
「この人間、何言ってんだ?」と一匹のミノタウロスが呟き、別のミノタウロスも困惑した様子で眉をひそめていた。
リカルドはこの混乱を利用して、間髪入れずに突進を開始した。最初の一撃は近くのミノタウロスに降りかかり、反応する間もなくマチェーテが空を切り、その巨体を倒した。
「なんなんだ、この武器は?」別のミノタウロスが驚いた声を上げ、リカルドの持つマチェーテが微かに輝き、通常の刃物ではない鋭さを感じさせるのを目にした。
「これは、怒ったメキシコ人の武器だ」とリカルドは言いながら、次の敵に素早く飛びかかり、予想外の速さと力で正確な攻撃を繰り出し続けた。「今日は、間違った相手に喧嘩を売ったことを学ばせてやるぜ」
次々とミノタウロスたちが倒れていき、彼らはこの異常な戦士にどう対処すべきか分からずにいた。
「こいつは一体何者だ!?他の冒険者とは違うぞ!」と、一匹のミノタウロスが叫び、怯えながら斧を取り出そうとした。
リカルドは笑い声を上げた。「どうした?俺が怖いのか?」
その時、一匹のミノタウロスが檻の一つを開けて少女を盾にしようとし、彼女を持ち上げながら、泣き叫ぶ彼女の手を掴んで見せつけた。
「おい、そいつはやっちゃいけねえだろう」と、リカルドは真剣な声で言い、決意に満ちた目で相手を睨みつけた。
リカルドはゆっくりと歩み寄りながら、ミノタウロスと少女から目を離さずに、マチェーテを高く構えた。そして、素早い動きでミノタウロスの腕を叩き、少女を解放させた。少女は恐る恐る彼に抱きつき、彼の足にしがみついたまま離れなかった。
リカルドは怯えるミノタウロスを睨み、「もう二度と彼女に触るんじゃねえぞ」と言い放った。
ミノタウロスは恐怖に怯えながら後ずさりし、残りの仲間たちと共に逃げ去っていった。
リカルドは少女を見下ろし、安心させるように微笑んだ。「もう大丈夫だよ」
少女は涙をいっぱいに浮かべ、彼にしがみついた。リカルドは、彼女を守ることができたことに安堵と感謝を感じた。
ルシアは隠れ場所から出てきて、他の捕らわれていた人々を案内して外へ誘導しながら、手を振って合図を送った。「リカルド、急がないと。もっとミノタウロスが来るかもしれないわ」
リカルドはうなずき、倒したミノタウロスたちを一瞥して言った。「いい考えだ、ルシア。いい教訓を与えたと思う」
二人がダンジョンから出ると、リカルドは深呼吸をし、正義を果たした喜びを胸に感じた。これが冒険の始まりに過ぎないことは分かっていたが、彼の手には頼れるマチェーテがあり、この先どんな困難にも立ち向かう覚悟はできていた。
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